「シルバーデモクラシー」の脅威

 大学のいま・ここにある危機とは、単に少子化や経済状況の悪化などだけでなく、より本質的には、「大学」幻想の世代的減衰にあるかも、というのは以前から指摘していますが、この「シルバーデモクラシー」論というのも、からんでくるようで。

 せめて「教育」くらいは、というのが、いわゆる中間層の本格的な出現以来、およそここ1世紀近くのニッポンのマジョリティの価値観だったはずで、それが高校から大学、大学院に至るまで、「学校」に身を置かせることはとにかく良いことである、といったルーティンをつくりあげてきたようです。でも、それももうそろそろ終わりなのかも。

 世代間「格差」の現実がまだうまくことばにされていず、だからこそ現在に至る来歴すらうまく意識されないままなのが、今のニッポンの大きな不幸のひとつ、だと思います。

スウェーデンの実例から見る日本の若者政策・若者参画政策の現状と課題

http://www.murc.jp/report/quarterly/201003/89.pdf


 実際、シルバーデモクラシーに関するこうした懸念は現実のものとなってきている。


 たとえば、高齢化と教育費の関係を分析した大竹文雄大阪大学教授らの研究では、高齢化によって地域の子ども1人あたり教育費が引き下げられていることが確認されている(大竹・佐野(2009)。筆者らの研究でも、地域における高齢化の進展は児童1人あたりの就学援助額や就学援助受給率(=就学援助受給者/公立小中学生数)を減少させることか確認されている(小林・林(2010))3。また、畑農(2004)の実証分析では1990年代以降に世代間断絶が強まり、現役世代が将来世代の負担を考慮しなくなりつつあることが示されている。


 そこで以下では、EU(ヨーロッパ連合)における若者政策の流れを概観するとともに、EUの若者政策・若者参画政策をリードしているスウェーデンの実例を見ることで、日本における若者政策・若者参画政策の課題と今後のあるべき姿について考察を加えていきたい。


 世代間格差が拡大し、シルバーデモクラシーが進展する中、若者の声を社会的意思決定過程に反映させ、持続可能な社会をつくっていくことが急務である。各世代が意見を出し合い、世代間格差を克服し、持続可能な社会システムの構築を目指すことは、今を生きる者の責任である。今後急速に高齢化が進展することを考慮すると、そのための時間的猶予はあまり残されていない。人口減少・低成長経済への移行によって、日本の民主主義が問われている。今こそ若者の参画によって、日本の民主主義をもう一度つくり直していくべき時期にある。