「出産」まわりの環境汚染・メモ

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 赤ちゃん産んで右往左往して、やっとの思いで役所に出生届だして児童手当の手続きした窓口で「こういったサークルありますよ」ってチラシもらったら、子どもの情報とか仕入れられるかな、友達できるかなって行くのよ。そこに20人の反ワク自然派スピ系がいて取り囲んでいろいろ言われたら、そりゃ。


 ママを選んで生まれてきたから始まって、胎内記憶、インナーチャイルド、NGステロイド(乳児湿疹はママの毒素)、母乳万歳、ミルクはアメリカの陰謀、自然分娩万歳、帝王切開かわいそう、子どものために良いものを選べない母親失格みたいに言われたら、なんか反ワクチンになってるのよ。気づいたら!


 しかもそこに、おっぱいマッサージ、自然派助産師、スピ系カウンセラー、抱っこ法の「先生」がいてお布施をサークルとは別途の申し込みで吸い上げるシステムになってるから、解散されないんだよ。先生方の集客システムな訳だから、信者って必要じゃん。中にいると気づかない。全く気づかなかった。


 市から紹介されて助成金もらって、会に賛同するっていう市議までいて、ママたちの声を市政に活かしますとかやられたら、今となっては怪しさ満点だって気づくけど、乳飲み子抱えて必死だったから気づけなかった。帝王切開かわいそうって呪いが強くて。恥はたまに晒すことにしてる。お目汚し失礼。

 「出産」というイベントに関わる過程で、このようなある種のカルトに引きずり込まれる可能性が平然と口を開けて待っている、しかもそれが「公」に関わる場所においてこそ、といういまどきのこの事態。いわゆるフェミニズム界隈の「女性」を介して根を張っていった過程が、わかりやすくは概ね80年代あたりこのかた、もう少し焦点を広げればあの「消費者」運動などにまでさかのぼれる射程距離で本邦「戦後」の情報環境と相伴いながら、というのが大方の見取り図かと。全国各地にある時期から一気に増殖していった男女共同参画なんちゃらを掲げたセンターだの何だのと同じ脈絡で、このような環境汚染は着々と進行していったかと。

 『ゼクシイ』以下の「殴られたら死ぬ」分厚さな広告雑誌に象徴される「ブライダル」ビジネスの過熱ぶりも、もうジョーク以上の深刻さと共に語られるようになっているが、概ね数百万円単位、ということはつまり並みの新車1台分に匹敵するようなローン組ませてまで結婚式をやらせる手口が平然とまかり通り、かつそれなりにまだ回っているらしいことは、たとえそれが全国各地域を概ね西南日本方面から北へと桜前線よろしく北上しながら食い潰してゆく焼き畑農法であろうとも、すでに結婚式のあとの生活では毛頭なく、他ならぬ自分自身が「いちばん輝く」ことのできるイベントとしての結婚式こそが目的になっていることは自明の理、本邦若い衆世代のおにゃのこたちにとっては。

 「出産」もまた、いや結婚(式)以上にハードルの高い「いちばん輝く」ことのできるイベントになってきている。妊娠から出産に至る費用の高騰ぶりは、たとえば産婦人科はすでにホテル並みの宿泊施設を併設したリゾートまがいのしつらえになり、そこに費やせるだけのカネを本人たちでなくとも親の財布含めてそれなりにたんまり持っていないことには、いまどきの「いちばん輝く」自分の「出産」にならないことになっているらしい。ブライダルビジネスな結婚(式)にひっかかったら、その後のこういう「出産」にも当然ひっかかるんだろうし、その流れのまま先のような集金カルトの網にもかかりやすい、と。なにせ自分は特別、スペシャルな存在だからという自意識だけは肥大しているのだからして。

 ただ、ことはそういう一部例外的なカネ持ち養分層に限ったことではない。「公」の仕事の場、パブリックセクターの中の人がたがとりわけある世代以降、平然とあたりまえのようにそういうゆるふわいまどきポリコレ「意識高い」系マインドを常識として実装してしまっているらしく、その結果見事にある種の結界、公共サービスに関わろうとした瞬間から逃れようのないある雰囲気や空気に巻き込まれるようになっている次第。このへんはかのゆるキャラが全国ほぼまんべんなく蔓延してしまった経緯などにも関わってくる、いずれ平成期本邦「公」のカルチュアとなってきているようで、このへん広く視野に収めた経緯を〈いま・ここ〉からの「歴史」として記述してゆくことは早急に必要だろう。通俗化してゆくゆるふわポリコレマインドと本邦「公」パブリックセクターの環境汚染問題、もちろん「公務員」になってゆく過程での試験やそこで流通している言葉やもの言い、身振りなどまでも含めてのお題であること、例によって言うまでもない。*2

 

*1:パブリック・セクター≒「公」が、もはやどれくらい平等に、かつ全国的にこのようなお花畑系市民サマカルトに汚染されているか、というのはもっと詳細にことばにして周知し認識してもらう必要があるとおも。

*2:毎度指摘しているけれども、あの上野千鶴子が京都の短大に蟠踞している頃、京阪神から関西圏の自治体をマメにまわってはオルグしていた、というタネの蒔き方がその後、「公」の現場での倭フェミスリーパーとして、より広くはここで言ったようなゆるふわポリコレマインドの拡散拠点として機能していった経緯も、正しく現代史の過程としてピン止めしておかねばならないこと、これまた言わずもがなのこととして。