140年前の米大統領訪日

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 新富座は、正面にテレンプの天幕、その真ん中に日米国旗を交差させ、東西桟敷から向こう正面の後ろまで、紅白のだんだら幕で飾りつけました。通行の場所には絨毯、大花瓶には無数の花、西洋菓子をうずたかく盛り上げて、正面二階の賓客の椅子は金の高蒔絵、運動場では氷水の接待と至れりつくせり。


 演目は福地桜痴原案・黙阿弥のこのときのためだけの新作「後三年奥州軍記」で、九代目團十郎八幡太郎義家は、南北戦争のグラントを擬したものでした。狂言半ばにフロックコート姿の勘弥と團十郎が恭しく挨拶。


 最後は柳橋・新橋などから名妓が七十名総出で両花道から出ての惣踊り。片袖を脱ぐと、肌着に星条旗の星が現れたそうです。グラントからは、大統領杯ならぬ「太平」と「グラントより」の二文字が入った特注の引幕が贈られました。


 国際社会に何とか船出しようとする明治日本の若々しさ、無邪気さを感じさせますが、それから140年経ったいまなお、妙な「既視感」があるのは、何故でしょうか。

*1:トランプ来日のあれこれにまつわってのtweetという脈絡。夜郎自大の民族性とか何とか、いずれそういう角度からの「文明批評」w的なインテリしぐさの昔ながらとは言え。