番ちゃんの譚・メモ

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 姫路の辻さん。田舎のおっさんにしか見えんよれよれの上着に膝の抜けたズボン、足もとは12枚コハゼの足袋。そのコハゼは純金製でかなり重いもの。姫路のどこの店に行っても顔だけで飲み食いできる。ヘタに請求して現金で払われるよりも勝手な値段を小切手に書き込んでくれるので店はむしろありがたい。土建の一次下請で儲けた人。


 取り巻きがあれこれウソをついてごまかしてカネを引っ張っているのも見て見ないふりしていたらしく、ある日取り巻きを正坐させて説教を。おまえらええようにわしのこのスネかじってくれたんで見てみい、わしのスネこがいに細うなってしもうたでな、と。3年前に死んだ馬の請求ずっと回してきたりええようにしてくれとったが、それでどんだけのことでけたというんじゃ、と。


 それでも、あいつは男になった、相撲を呼んでこれるだけの男になった、とほめた由。地方巡業の勧進元になれたということらし。これでわしもスネかじられた値打ちがあったというもんだ、と。


 牛乳瓶の底みたいなメガネかけた弱視のダンナ。眼が見えないのにせり場にやってきて福山弁で大きな声で手下にせりかけさせる。とにかく負けるな、ゼニ払えばそれですむんじゃろ。競馬場へ行っても眼が見なないので取り巻きが、社長、社長の馬が勝ちそうでっせ、と言うと、ゴール前であさっての方向向きながら、見てみい、わしの馬はやっぱり間違いないじゃろ、と見えたふりで大声で。


 新幹線や高速道路のトンネルのシールド機械の代理店みたいな権利を持っていて一手に利権。輸入機械だったからか。


 漁協を盾にして新幹線が通ると漁業被害が、と無理スジの請求をゴリ押ししてひと設けした御仁。


 Hの親方の譚。サラの牧場に行って冷やかしにこれなんぼなん、と尋ねてまわる。三城牧場でのこと。これはもう売れた馬で、と言ってもきかず、いくらで売ったん、と追い討ち。8000万で、と返答されると、なんじゃそんな安い値段やったらわしが買うてやったらよかったのに、と。


 常石造船の譚。宮澤喜一一族のやりたい放題。寺を買い取ってその中で産廃の処理場や古タイヤその他の焼却場などを経営。一部を削って豪華なホテルを建てるも、外装はコンクリ打ちっぱなしの見てくれで、それに反して中身は贅沢を尽したもの。税金がだいぶ違ってくる由。儲けを出すための施設ではなく、帳簿上の辻褄合わせのためだけに社員が宿泊したことにさせられたりもしていた。

*1:聞き書きとまで行かずとも、ある種の備忘として。