ネットと極限状況・メモ

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 被災地での劣悪な暮らしと余震の恐怖という極限状態で「酷い目に遭っているのは奴らのせいだ」と生活を守っているはずの避難所スタッフを敵と誤認してしまい、集団で状況の改善を訴えるという異常な場面を見た。極度のストレスと不安は冷静な判断力を奪い、集団暴走すると歯止めが利かなくなる。


 この大災害の被災地という非日常の世界で起こった、平和な暮らしを送っていれば到底想像できないような「不安や恐怖から味方を敵と誤認する」という特殊な心理状態。近年ネットで頻発する集団ヒステリー。「誇張だろう」と思っていた関東大震災での市民による虐殺は充分あり得ると思うようになった。


 携帯電話がまだ無い神戸の被災地ではラジオが唯一の情報源だった。最初は家族や友人知人を失った人達の悲劇が語られた。常態が改善すると救出劇や助け合いのような美談が語られた。「次は変な話だったりして」と冗談を飛ばしたがそれは無かった。報道されなかったが略奪や火事場泥棒は確かにあった。


 テレビは自衛隊やボランティアの活躍。温かい食事の配給や風呂サービス。助け合う被災者という美しい場面しか写さない。それを見て「被災地に秩序があった。素晴らしいい日本人」と語る人は多い。実際はみんな飢えと寒さと余震の恐怖でストレスマッハで、秩序や道徳なんて崩壊してる地域すらあった。


 あのお洒落な神戸の街が無茶苦茶に崩壊し。パジャマにスリッパ履きで体に泥で汚れた布団巻きつけた被災者が、水と食べ物求めて徘徊するという異様な事態になっていたわけで。まさに空襲に遭ったかのような有様。


 避難所運営の鉄則のひとつに「全員(実際は1家族の場合もある)に行き渡らない水や食事は出さない」というのがある。もらえない人達が怒り狂うのだ。食料がらみではないが自分も襟首つかまれた事がある。これは本当の飢餓を体験した人にしか理解できない。理性を司る脳の前頭葉がおかしくなるのだ。


 被災地で無事な自動販売機は全く見なかった。こじ開けられ取り出された飲み物は焚火にくべて温められ被災者の飢えと渇きと寒さを和らげた。機能を完全に停止してしまった街は恐ろしく寒く、着る服すら無いような状況ではそうせざるを得なかったのだ。