ロボットの「戦友」・メモ

ロボット兵士の戦争

ロボットと兵士の絆

主にアメリカ軍のイラクでの活動を扱っている。2010年日本で翻訳、出版された本。

amazon.co.jp/dp/4140814284/…

イラクのキャンプビクトリーのロボット修理工場に爆発物処理班の兵士が即席爆発装置で破壊された爆弾処理ロボットの残骸を持ってきた。
ロボットの頭部には「#」マークが書き込まれ、それはこのロボットが遂行した任務の数を表していた。
修理工場の責任者は兵士に修理は不可能だと告げる。


兵士はひどく取り乱した。「新しいロボットは要らないから、スクービードゥーを返して欲しい」と。


ゼネラル・ダイナミクス・ロボティック・システムズの副社長は言う。「(ロボットの)人格(個性)は、たとえば、ステアリングがちょっと甘くなったせいだったりする」


因みにスクービードゥーはパックボットと呼ばれる種類。日本の福島原発事故でもこれと似たロボットが使用された模様。wired.jp/2004/03/17/%E7…


その後イラク戦争が進むにつれてロボットが多く供給される様になり、使い捨ての様な状況になると愛着が薄れ、道具の様に(本来その通りなのだけど)扱う様になったと語る元兵士の証言。
youtu.be/EX5J8KG3p9k


兵士達はロボットにポルノ女優や格闘家の名前をつけていたとか。小馬鹿にもしていたけれど、愛着を持つ兵士もいたのだとか。

戦争初期はロボットの数が少なく、貴重で、その極限状態が兵士達のロボットに対する特別な感情を生んでいたのはあるかも。

本より引用

“ジョエル・ガローによれば、人とロボットの相互作用の進化が続いている結果、多くのロボット操縦者は「機械に戦地昇進やパープルハート勲章を与えている...たとえば、第737武器中隊のある部隊は、EOD(爆発物処理)用ロボットをタロン軍曹と呼んでいた。タロン軍曹は2等軍曹に昇進し、パープルハート勲章を3度受賞した」。軍人はこうしたことをただふざけてやっているのではなく、心から機械との絆を感じている。イラクに3度赴いたポール・バリアン1等兵の話では、彼の部隊のロボットは「フランケンシュタイン」と呼ばれていた。爆破されたほかのロボットの部品でできていたからだ。だが、チームとともに戦闘に参加したあと、フランケンシュタインは新兵から1等兵に昇進し、EODの記章までもらった。爆発物処理作業をいとわないひと握りの男たちのあいだでは「誰もが欲しがる名誉」だ。


「たいしたものさ。彼はチームの1員、仲間だった。家族も同然だった」


ルンバの持ち主と同じで、こうした軍人も、ロボットが生きているわけではなく、機械は昇進しても無頓着だということはわかっている。ロボットは当然のことをしたまでで、それに勲章を与えるのは、ポップコーン製造機がポップコーンを作ったからといって勲章を授与するようなものだ。それでも兵士たちは、生きていないモノとは考えたくない何かと、最も印象的で感動的なたぐいのできごとを体験している。この機械がなかったら自分たちは死んでいたかもしれないと認識しているため、生きていないとは考えたくないのだ。ともに戦い、命まで救ってくれたロボットを、単なる「モノ」とみなすのは、自分自身の体験を侮辱するのに近い。そのため、ロボットの話をするときはもちろん、ロボットとのかかわりかたまで、人間の仲間にするのとほぼ同じになる。傷ついたロボットと行動をともにする兵士は、こうした愛着を最も強く感じる。ジョゼ・フェレーラによれば、バグダットの修理工場での仕事は、整備士というより、緊急救命室の医師の仕事に近かった。


「みんながここで、誰かの命を救えたとわかったときの満足感を味わえたらいいのに。ロボットを連れずに帰ることになるかもしれないと思いながら、初めてここの入ってくるときの、彼らの目に浮かんでいる不安を、その目で見ることができればいいのにと思う。かわいいティミーが生きている、生きて再び戦場を動き回れる、と知って帰っていくときの、あの笑顔を目にし、抱擁と握手を肌で感じることができたらいいのに」


皮肉なことに、人間がこうして機械に親密な絆を感じることは、ときとして、そもそもロボットが戦場に導入された論理的根拠そのものに逆効果となる。無人システムは人間のリスクを軽減するとされている。ところが、兵士がロボットに絆を感じると、ロボットの身を案じるようになる。たとえば、人間のチームが「誰も置き去りにしない」ように、仲間のロボットに対しても同じように接することがある。イラクであるロボットが動かなくなったとき、EOD班のある兵士は、敵の機関銃による銃撃のなかを、50メートルも走って「救出」に向かった。こうした効果はロボットのデザインにも影響する。ロスアラモス国立研究所のロボット物理学者マーク・ティルデンは、ナナフシという昆虫をモデルにした独創的な地雷除去ロボットを作ったことがある。地雷源を進み、地雷を見つけると脚の1本でわざと踏みつける。それから体勢を立て直して前進を続け、文字通り脚の最後の1本まで、地雷を爆破し続ける。軍のテストでは計画どおりに機能したが、責任者だった陸軍大佐が「ぶちぎれた」と、ティルデンは言う。大佐はテストが「非人間的」だとして中止を命じた。「焼け焦げ、傷つき、体の自由が利かなくなったロボットが、脚の最後の1本まで、その身を引きずりながら進んでいく悲痛な光景に、大佐は耐えられなかったのだ」~略〜


無人兵器の操縦に関する研究で、人間の操縦者と協力して任務に当たるAIプログラムに、「性格」の違う2種類が用意された。ひとつは人間のような声と癖をもち、人間に対して「おい(相手の名前)俺たち、すごい働きをしたよな。お前と組めて最高だ!」と言い、ジョークを飛ばした。もうひとつは、単調な声で「ハロー」というだけ。こうした性格の違いは任務終了まで続いた。人好きのするAIのほうは人間に任務についてアドバイスをするだけでなく、こう言って、励ましもした。「この標的で最後だ。こいつを片付けようぜ!」。もうひとつのAIは、「注意せよ、最優先」しか言わなかった。その差は結果に表れ、人に好かれるAIと人間のチームのほうが早く任務を終えた。ロボット戦争では、性格のいいAIが勝利する。”

以上引用終了。