「取材」現場の〈リアル〉・メモ

 きっと色々質問が出るだろうと思いバッと手を挙げると、その場で手を挙げたのは私一人。えっ、と驚きつつも、オタワの展開目的であるオペレーションNEON(対北瀬取り監視作戦)について質問しました。引き続き「他に質問のある方は」と声がかかるも、やはり挙手はゼロ。空気が若干重くなり、ヤバイと思った私は再度挙手し、「艦橋横にあるデコイランチャーは近代化改修で付けられたのですか?」など若干突っ込んだ質問をすると、艦長が武器担当の士官の方をわざわざ呼んで懇切丁寧に解説してくださいました。そして「では最後になにか他の質問は?」という呼びかけに、ついにNHKの方が「それでは...」と。おぉ良かった!と安堵の空気が流れました。しかし、その質問内容は「呉寄港中は何をしたいですか?」で、場が固まります。艦長は若干戸惑いながら、「えっと、それはプライベートですか?それとも公務ですか?」と聞き返され、両方ですということで、「広島市内を観光したり、日本文化に触れたいですね」という非常に当たり障りのない答えが...そしてインタビューが終わり、艦長室を離れようとしたそのとき、誰かがボソッと「あの空気で何聞けばいいか分からないよ」と言っていたのを聞いて、マジかよ...となりました


 オタワ取材前のブリーフィング、そして艦内ツアー中も、「我々は瀬取り監視のためにこれだけ活動しています」という説明を何度も受けました。カナダ海軍側が何を取材してほしいかは極めて明白だったのです。だからこそ、何を聞けばいいか分からないというその一言は、私にとって信じられませんでした。