睾丸譚

 うちの社員がキンタマ腫れて休み。部長その他が「意味が分からない」と憤っていたので、コンコンとワイの体験談を聞かせてやった。


 当時ワイは二十歳そこそこ、部隊内で下っ端ながら後輩もいて充実した国営ドカタ生活をしていた。
 性欲も猿並で、外出しては色んな手段を使って色んな女性と関係を持って、まさに我が世の春を謳歌していたのであった。


 ある時、戦闘結節ごとにAARを挟む一風変わった演習があり、これに参加した。


 当時ワイはガタイがよく、足も速かった為に丸い人を抱える事が多かった。攻撃前進中、攻撃前進破砕射撃を受けて我々は敵方に猛烈ダッシュをする。(当時流行ってたからね)
 いつもなら対戦車火器を担いでヒョロガリ小銃手など簡単に捲くっていたものだが、この日はなんだか調子が出ない。


 それどころか走れば走るほどヒョロガリ小銃手たちとの距離は開く一方であり、ヒョロガリ共もこちらを振り返り「信じられないアイツが」みたいな顔をしている。舐めやがって――みたいな事を考えていると徐々に鼠径部がというかこれはキンタマーが痛いのではないか?などと朦朧


 いよいよたまらなくなりその場にうずくまる。ズボンにそっと手を入れ確かめると、なるほどどうやら腫れているらしい。
 ヒョロガリ達の支援もあり、ほうほうの体でAAR会場に到着
 親分が待ち構えており「どうしたんだ、どうしたんだ」と騒ぐ
 そのまま地区病院に連れていってくれるものかと思っていたが、傷病箇所がキンタマということを知ると、どうも好奇心が勝ったらしい。

「見せてみろ」

 え?ここで?1個中隊(約100人)体育座りしてる目の前で?
 中隊で一番偉いやつの指示を断われるワケはなく、仕方なく装具を外し、ズボンとパンツを下げて見せる。恥ずかしい以前にめっちゃ痛い。

「竿で見えないから上げろ」

 殺意が芽生える。しかし見せれば海千山千のI幹FOC出の中隊長、何か処置を指示してくれるかもしれぬと一握の望みにかけチンチン捧げ銃

 一言

「うわぁ!腫れとるばい!腫れとるばい!!w」

 ○してやろうかコイツ


 上曹共も見に来る。中曹も来はじめた。初曹はヘラヘラしてる


 同期共はワイの女遊び知ってるから哀れみの目を送ってくる。
 死にたいなと思い始めたくらいで高機動車が迎えに来た。
 生尻で座席に座ると運転席の専任が「ズボン戻せ殺すぞ」とか言ってくる。死にたい。


 その後地区病院に連れていかれ、ドーランつけたまんま、ここでも捧げ銃を命じられる


 地区病院のヤブの手に負えないということで、トンチに戻り制服に着替えさせられ、キンタマ痛すぎてカニ歩きになりつつタクシー乗って泌尿器科へ。ちょっと安心。周りの目が痛い。「自衛隊だから性病だろ〜」みたいな顔してる。 正解だよ馬鹿野郎
 診察室に呼ばれる。
 ジジイの先生またちょっと安心


 ジジイ、肥大したキンタマを眺めつつ、開口一番「最近、不潔なセックスした?」などと聞いてくる。
「不潔なセックスとは?」質問には質問返しだ。

「尻とか」

 このシンプルな返しがとても面白い。
 「相手には伝えてるのか」と質問が続く。


 「相手なんか分かりませんヘラヘラ」みたいな答えが泌尿ジジイの逆鱗に触れる。
 診察室でめっちゃ怒られる。いや、ホントにめっちゃ怒られた。第1種夏服で。
 抗生剤で良くなるらしい。
 淋病だかクラミジアからの副睾丸炎とかいう病名
 性病は無かったかもしれない。随分前の事なので記憶もおぼろげ


 ……とまあ長くなったが、性病起因の副睾丸炎にはみんな気をつけようね。副睾丸炎自体は性病なくともなったハズだから、異常を感じたらすぐに病院に行こう。
 「抜けば治るんじゃね?」とか同期に言われて抜いたら茶色の精子が出てきた記憶があるから無茶はするな。女遊びも程々に。


 因みに自社員への精神教育のつもりで話したんですけど、笑い話で終わってしまいました。
 まあけどキンタマ病の社員への怒りは収まったみたいなのでよかったです。

king-biscuit.hatenablog.com

選挙ギャルズ始末・メモ

 選挙ギャルズは、やっている人たちが、あそこまでやらなければならないほど落ちぶれてしまっていたことと、どうやったら信頼関係を築けるかわからなくなっているのを明らかにしただけだった。
 信頼関係が築けないから落ちぶれてしまったわけで、話かけるための言葉すら失っていたんだね。


 まあ、パレード開催前からそんな事だろうと思ってはいたが、実際に開催されたらギャルがわんさか参加するド派手なパレードだった、という可能性もあったので、あえて言わなかったわけだが。結局開催されてみれば、若者が参加したいと思えるような代物じゃなかった訳だ。



 若者に話かけるための言葉すら失っていたとなると選挙ギャルズの中の人または後援者である左派野党は若年層の問題意識をまったくくみとれていないことにもなる。だから若ぶった変な言葉遣いと変な色使いとキャラクターですり寄るほかなかった。事前に若者から話を聞こうともしなかったのは明白。


 若者の本音を聞き出して政策に活かそうとしないで、戦争反対、憲法改正反対といった呪文をギャル語風に翻訳しただけなのが選挙ギャルズ。自分たちの認知を変える努力をしないで、戦後77年使い古してきた呪文を押し付けて、それが君たちのためだというから嫌われるのがわからないのだろうか。


 選挙ギャルズがヒアリングをやっても、

   若い人「私はXXXをどうにかしてほしい」
   政党の人「でもね戦争をしないように憲法改正に反対しないとダメよ。あと国葬反対!」

となって、党の事情をよく知っている仲間内の若い人にしか話を聞いていないのではないか。
 こんな政党に誰が期待するというのか


 選挙ギャルズの後援政党が若い人の本音さえ聞き取れていないなら、他の年代、他の階層の人々の本音も聞き取れていないのではないか。いったい誰のための政党なのだろう。
 私は与党一強はよろしくないと考えているのだが、これでは与野党拮抗は無理だよね。



 選挙ギャルズの後援政党を支持していると思われる方々さえ、あまり選挙ギャルズに言及していない。これは自尊心が傷つくからだろうか、それとも苦言を呈したところで何も変わらないと思っているからなのか。
 はっきりと声に出して批判したほうがよい。選挙ギャルズは汚点どころの話でない結果を残した


 選挙ギャルズと銘打っておきながら、「ギャルとはマインドのこと。性別も年齢も関係ない」とか、はなからエクスキューズを出しているのが最高にダサかったわけで。それってつまり、真にギャルと言えるような若い女の子を、パレードに呼び込む事を諦めていたっていう証左に他ならない。

コミケと都営バス運ちゃんのこと・メモ

 一般参加したコミケ帰りのバスの運転手さんが面白かった話。乗ったバスは東京ビックサイトから東京駅まで向かう都バスの昼下がりの急行便で、巣鴨営業所の車と運転手さんが応援できていました(以下リプに続く)

 運転手「このバス大変珍しいため写真を撮る方が沢山おられます。田舎に帰省しているはずの方おられましたら、バレないようご注意ください」


 運転手「沢山写真を撮られていますが皆様には一切興味はございません。ご了承ください。」


 運転手「昨日は交通、メカミリでしたね。私は一般参加したかったのですが、この仕事が入りました。知り合いにお使いを頼んだので、本日帰宅してからが楽しみです。」


 運転手「夢の国ビックサイトから現実の国東京駅八重洲口へ参ります」


 運転手「普段は巣鴨秋葉原というド田舎を走っていますが、有明という大都会を走るのは初めてで非常に緊張しています。」


 運転手「コミケには詳しくありません。2回しかサークル参加したことがありません。」


 運転手「このバスは都営バスでも29台しかいない大変珍しいバスです。そのためこの先も沢山写真を撮られます。本来この場所に居るはずのない方、セルフモザイクで回避してください。」


 運転手「しばらく黙ります」


 運転手「次の交差点を曲がった先が混んでいるか混んでいないかで所要時間がかわります。右に曲がりm …………そこまでこんでませんね。御安心ください」


 運転手「ビックサイトから東京駅まで25分程度で参ります。最長記録は90分でした。そこまではかからないと思います。」


 運転手「只今走っておりますこの道路は白バイゾーン、速度取り締まりが多いところでございます。急ぎたいのは山々ですがゆっくり走ります…先程も1台捕まっておりました。」


 運転手「佃大橋を超えますと夢から現実に戻す魔の左カーブがあります。しっかりお捕まり下さい。…地上に舞い降りまーす。」


 運転手「段々と終点が近づいてまいりました。みなさま、心の準備はよろしいでしょうか。」


 運転手「特に戦利品など忘れ物ございませんようご注意ください。忘れられますと大変ショックです。また、営業所での引取りという儀式もございます。本日は都営バスをご利用ありがとうございました」

(拍手)

あるテキヤのおもひで・メモ

 高校生の頃、テキ屋(祭りや夜店の屋台)で夏場だけ毎年アルバイトしてた。
 水ダウで小峠が「テキ屋インチキ説」を掲げていたが、大半はあんなもんじゃない。
 ああいうのを見て当たりが出ないくじ引きなどに全財産を使ってしまう子供などが出ないように、闇を暴露していこうと思う。


 まず商店街や地元の店舗が軒先でやってる店と、次の日にはきれいさっぱりいなくなる誰が運営してるのかわからないような店とを区分する必要があり、大半は後者だが、私は後者でアルバイトしていた。
 友達の親がテキ屋の経営者で誘われて夏場だけやってた。


 上司(以降A)がとにかく怖い、気分ですぐ殴ってくる。
 私は対応力があったので数えるほどしか殴られてないが、どんくさいやつはばんばんしばかれる。
 アルバイトに来るのも男女問わず家がないようなヤンキーばかり。


 バイトの初日、奈良県のどこかの祭りに向かっている途中、弁当のごみを足元に置いていた。
 すると、「そんなとこに置くな!窓から捨てろボケ」とめちゃめちゃキレられた。
 ???だったが、確かにAは食べかすとか残った状態の弁当なども高速道路にばんばん捨ててる。


 そして続けて

「おい新人、お前よー覚えとけよ、『地球はゴミ捨て場』や。」

と初日から名言をいただいた。
 私はそういう教育を受けていなかったので衝撃だったが、やってみると背徳感と爽快感が混じって気持ちいいのだ。
こうして徐々に道徳心が崩壊していく。


 そんな感じなので行く先々でモメるが、暴力的な背景で全て突破していく。
 現場帰りに20人くらいで飲食店に入っていくと客がいっせいに帰っていくとかもザラにあった。
 そしてもうボス(以降B)がいかつ過ぎる、ムキムキの体に茶色いスーツでサングラスにオールバックのロン毛。


 多分Aのオーバートークだが、ある祭りで地元民と喧嘩になったとき50人相手にBは負けなかったらしい。
 三国志が好きだったので「長阪の戦いの張飛かよ」と心の中で思っていたが当然口に出すことはできない。


 Aは何年もやっているのに要領が悪かった。
 屋台を閉めてトラックに積み込んでるときも、その積み方やと入りきらんやろなーと思いながらも指摘すると殴られるので黙って言われたとおりに積んでいく。
 かなりの肉体労働だが、1時間くらい経ってから「全部降ろせ」と全部やり直させられたりする。


 この「全部降ろせ」は名言の一つとして我々の中で長年モノマネされていくことになる。
 またAはよくBに叱られていて、その後私に「今のオレ悪いか?」と聞いてくる。

「いやAさんは全然悪くないです」
「せやろ、新谷はよくわかってくれとるわ」

といった感じで謎に関係が構築されていった。


 カステラやお好み焼きに入れる水を忘れて紀ノ川祭りという現場に来てしまったことがある。
 実は倉庫時点でわかっていたが、指摘すると殴られるので黙っていた。
 どうするのかなと思ってると、Aはバイトを集めて

「川の水汲んでこい、Bに絶対言うなよ、お前ら絶対食うなよ腹壊すぞ」

などと言っている。


 その祭りで提供された食事のすべての水は川の水であった。
 食材1年前から凍らせてたのを使ったりはザラだし、電球に虫が当たって焼きそばとかに落ちてくる。
 鉄板や氷やなにもかも衛生管理はめちゃめちゃ。
 テキ屋で食べ物を買うときはよく注意したほうがいいと個人的には思う。


 それでもどうしても食べたい場合は祭りが終わってテキ屋が片づけを始める頃に行けばいい。
 お好み焼き屋焼きそばなどはどうせ今から捨てるから、可愛い女の子ならほぼ無料でもらえる。
 男でも100円払うとか言えばくれる。
 言うまでもないが、ボテトやカステラや焼き鳥などは翌日も使うのでくれない。


 さっきの川の水で作ったカステラやらお好み焼き屋らの話だが、Aが

「絶対食うなよ、当たるぞ、くじの代わりにこっちが当たりやガハハハ」

ドスッ(アルバイトを殴る音)

「何わろとんねん」

みたいなやりとりを思い出した。


 くじびきだがはっきり言って当たりなどはない。
 原価から考えれば当然なんだが、プレステやらブランド物やらが当たるはずがない。
 私の職場では空気いれて膨らませるビニール人形のみ当たりが入っていた。


 300円の宝釣りで30分の1とかで原価5万円超えのプレステなどが当たるはずがない。
 20回6000円突っ込んだ時点で50%くらい5万円のものが出ていくなど商売として成立してない。
 最近では撮影っぽい人が来たら仕方なく実演できるように当たりを仕込むんだろう。


 このタイプのくじって今はもう無いかもしれないが、「く」の文字の枠からはみ出てる広さで数字がわかる。
 当たりが本当に入ってるのか疑うやつが現れたら裏から当たりを手に仕込み実演すればいい。
 万が一ヒカルみたいに全部めくりたい人が現れたら、途中でガサッとくじを足すように教えられて

 バイトが間違えて当たりを出してしまったことがあって、すぐに「今の間違い!」とかって取り上げたときに子供がギャン泣きしていかつめの父親がクレームを言いに来たんだが(当然だが)、
 そこにBが「なんかゆっとるやつおるんかー 」と現れただけでその父親は逃げて行った。


 ちなみにBはアルバイトのことを

「おーい、人間」

と呼ぶ。


 写真のような光るブレスレットを屋台で売ってるのを見たことがあると思う。
 冷凍庫で凍らせば何回でも使えます!と言えと教えられていたが、実際は1回しか使えない。
 騙されたと気づいた翌日には店は無いし、問い合わせ先も当然無い。
 来年なんか言われても去年と運営が違うと言えばいい。


 祭りでも商店街や地元の店舗が軒先でやっているようなものは衛生的で良心的だし、上記のようなこともほとんどないと思う。
 その判断は明日問い合わせれる場所があるかどうかで決めることをお勧めする。
 失ったら困る信用を持っているかで取引相手を判断するのはビジネスの基本だが。


 金魚すくいなどのポイ(すくう網みたいな紙)は4号~7号というのがある。
 4号は絶対破れないレベル、7号は水につけただけで破れるレベル。
 通常は6号にしておいて、混んできたら全部7号にする。
 いきってる彼氏とかには7号を渡し、かわいい子供とかには5号を渡す。
 4号は実演用。


 豆知識だが、夜店の跡地に深夜に懐中電灯を持っていくとだいたい小銭が落ちてる。
 見つけにくい河原とかだとかなり集まるらしく、何名か必ず来てる。
※警察に届けてください


 バイトが寮みたいに使える3部屋くらいの平屋があって、家出少年少女みたいなのがごちゃまぜで住んでた。
 玄関を開けた瞬間シンナーくさいので我々はそこを「アンパンマンの館」と呼んでいた。
 私はそこに泊まることはなかったが、遊びに行った時も幻覚で龍と戦っている少女がいた。


 ちなみに近いエリアの祭りは日が被ることはほぼ無い。
 なぜなら同じテキ屋がぐるぐる回ってるから。
 だから全ての関西の花火大会の花火を見たが、私の中での1位は三重県の「熊野大花火大会」だ。


 熊野大花火大会は海に停泊してる船から打ち上げるので、海岸のどこからでもきれいに見える。
 そして、最後の静けさの後に突然海面に1発だけ放たれる巨大半円花火が美しすぎて儚すぎる。
 見逃すとまた来年なので固唾をのんで見守る。
 最高なので関西の人は是非行ってみて欲しい。


 まとめると、

  ・口に入れるものを買うときはよく考えよう
  ・それでも食べたかったら祭りの終わり際に(よく考えよう)
  ・くじ引きはよく考えよう
  ・光るブレスは当日限り(よく考えよう)
  テキ屋の人と喧嘩するときはよく考えよう
  ・熊野の花火はキレイ(行ってください)

 念のためですが、田舎の高校生時代に夏場だけやっていたアルバイトで、20年以上全く関わりはありません。

量も質もボロ負けだった戦争・メモ

 リツイート。それはぼくも20年くらい前に通った道。日本に居て日本語のミリタリー書籍(1970-80年代の)ばかり読んでいると「世界初の戦略偵察機百式司偵」とか「米軍を驚愕させた二式大艇」とかのアオリ文句が身についちゃうから、海外というかアメリカに来てみると、日本機なんて十把一絡げに「ゼロ」で片付けられている現実に「どういうことだよ!」と思ってしまう。


 日本陸海軍軍用機の生産数と配備時期を調べると「…全部ゼロでもしゃーないよな」という気になる。そして米軍機の生産数と配備時期を調べると「あ~…」という気になる。


 「ブリキの戦車と違って飛行機の性能は同等、数が同じなら負けない」というのもせいぜい1943年前半までの話、あるいは大戦末期まで生き抜いたベテランの強がりみたいなもので、1944年以後に前線配備された米軍の「新人」は総飛行時間500、戦闘訓練200とかを積んでたりする。


 調べれば調べるほどに「ダメじゃんこの戦争。陸だけじゃなく海でも空でも、量だけでなく質でも圧倒されてボロ負けじゃん」という容赦ない事実に直面して、「震電が実戦化されていれば戦争には勝てなくても、B-29に一矢は報いられた」とか言ってたのが虚しくなる。


 そこから「俺は騙されていた!日本軍のダメさ弱さをみんなに知らせなければ!」という変な使命感を持って、正反対に偏ったバイアスだらけの見解をポンポン出しちゃう暗黒面に落ちる人は、たまにいる。

伏線とフラグ・メモ

 小説読者がやたらに伏線とその回収を重視している傾向について考えていたのだけど、どうも最近のあれ、伏線じゃないんじゃないかと思えてきた。じゃあ何かというと、フラグです。


 もともと伏線というのはミステリなどで謎解きがあった場合、作品の前のほうにその謎解きの正当性を担保させるような事実を紛れ込ませていくこと。この「紛れ込ませる」というのが眼目で、読んでいるときに伏線と気付かせないことが必要なわけ。


 しかし最近は「ここに伏線があるからいずれ回収されるはずでは?」という読み方をしているように感じる。だけど初読の段階ですぐにわかる伏線というのは伏線として劣っているか、あるいは全然違うものだ。少なくともミステリではね。


 一方フラグというのは本来ゲームで条件をクリアしたかしていないかを記録し、次の展開へと進めるものだった。それが次の展開を予期させる事象が出現したことを「フラグが立つ」と呼ばれはじめる。さらに死亡フラグのように次に起こるであろう展開を約束するものになり伏線と見なされるようになった。


 そうなると「○○が起きたから××が起きるはず」という予想が読者の中に生まれ、それが予想どおりになることで満足を得る、という読み方が広まってくる。これは正直、あまりよろしくないことだと思っている。先の展開が予想どおりでないと面白くないと思われてしまいかねないからだ。


 作者が伏線と思わずに書いていることでも読者が違和感を抱けば「これは伏線かも」と先入観を持たれる。作者は伏線と思ってないからその先に何も展開を作らなければ読者は「伏線回収してない」と不満を持ちかねない。


 だからって読者に「読み方を変えろ」と指示することなどできないし、するべきでもない。読書の楽しみ方は自由だ。「伏線」という「フラグ」重視で読んでもいい。ただし、ただ作者としては「それ伏線じゃないし」と心の中で抗議するけどね。

 もはやミステリーなんて求めていないのでは。
 今の伏線と呼ばれるフラグは言わば「多少複雑さを帯びた茶番」で、実際に求めるのはお約束の展開。
 そこにミステリー未満の「脆弱な謎」がスパイスとして入ると、鼻を明かした気分になれるから好まれているだけ。

 イアン・マキューアンの『土曜日』を読んだ時、こちらの空振りぶりに殴られた気がしました。
 伏線が思い通りに回収されると作家様との共同作業に発展したようで嬉しいのも事実ですが、やはり思わぬ方に話が転がった方が楽しいです。映画館で予告編は目をつぶる派です。

コロナ禍とお医者様・断片

 「全ての医者がそんな奴らではない」ということを示したい思いもあってツイートしてきました。巨大インフルエンサー医師たちに比べたら自分なんかのちっぽけな影響力では全く意味ないんだけど。

 歴史的なパンデミックで、人生で初くらいの「正義」のポジだったこともあるだろうから(そりゃ当たり前)一部の医師がかなり暴走してしまったのはそうなんだけど、とはいえ規範を語り、それを社会に従わせる権力を持っている者は、相応の反論を受けないといけない。

 もうすぐ日本でもコロナは2類からはずれて特別な病気ではなくなるし、そろそろ結論が見えてきた。コロナは初めは本当に怖い病気で、国民は皆思考停止になり、自分達を導いてくれる存在として医者を崇めた。自粛を余儀なくされてネットのテキストばかり見ていると、目立つ医者インフルエンサーの存在を知る。なんだか優秀そうだし、医者同士で賢そうなやりとりやっているし、信用できそうなのでフォローしてみよう。Twitterアルゴリズムの変更もあり、そういうインフルエンサー医師が多くのユーザーに「おすすめ」され、さらに「影響力」がインフレしていった。


 彼らは教祖のようになり、たくさん書き込むうちに全く間違ったことなどを言ったりするのだが、教祖が間違いを認めるわけにはいけないので、ありとあらゆる詭弁を弄して議論を煙に巻くようになっていく。いっぽうコロナはどんどん感染し易くはなるが、肺炎にはなりにくくなり、見方によっては一時的な急性上気道炎を起こすだけの風邪ウイルスととれるようになってきた。しかし教義の根本とも言える「コロナウイルスの蔓延を防がなければいけない」という前提を覆されたら、教え自体が瓦解してしまう。なのでオミクロンになってすら、教祖たちは「コロナは怖い」と唱え続ける。


 しかし教祖たちの教えのとおりにしていても全然「救い」は訪れないし、信者たちも疑問に感じ始める。いくら祈って炎天下マスクをしても周りでどんどん感染者が生まれる。とうとう信者の数が減り始め、教祖たちの教えを支えてくれていたはずの感染症学会がとうとう「コロナは風邪」と言ってしまった。


 教祖たちは「自分たちは教祖ではない、科学的事実を述べていただけだ」と今も言い続けている。かつての信者たちも今はもう興味を失い、眺めているだけだ。かくしてコロナで生まれた医クラインフルエンサー教は消えていく。しかし、国民の中に根付いた医者ヘイトの気持ちは無くならない。


 旗色が悪くなった教祖たちは一般の人達が理解できないであろう生化学的な話題や統計の話を増やして一時的に注目されないようにしようとしたり、明らかにおかしなことを言う反ワクの一味を目立つ場所に引っ張り出してきて自分の正当性を高めようとする。

 素朴に読むなら、比較的常識的な医師としての感想だと思うのだが、そこはそれ、なにしろヘルSNSの本邦Twitter世間のこと、みるみるうちにこのような「反ワク」系クラスタが群がってくるようで。当然、そこでもまた小さなこぜりあいの局面が生まれ、もともと提示されようとされていたはずの「問い」も、喧噪の中に埋もれてゆく、いつもの風景。

 バンバン死んでんじゃん。数字読めないのかな??

 ギャグセンス低いすね。もう少し面白いギャグを考えたほうが大衆受けすると思いますよ。頑張って下さいね。

 「上気道炎だけでなく肺炎も起こすウイルス」である前提は今も覆っておりません。