文学

「文学」と呼びならわされている多様な表現の形式、と、その不自由・雑感

いわゆる「文学」と呼びならわされてきている多様な表現の形式――とりあえず話し言葉も含めての言葉を介してのものに限っておくけれども、それが「個人」の「創作」としてあたりまえに認識され定義されるようになってゆく過程の外側、〈それ以外〉の部分をどのよ…

アクチュアリティ、と、リアリティ・メモ

花田清輝の言うところの、アクチュアリティとリアリティの関係について。 アクチュアリティを、一応、偶然としてとらえ、現在の偶然を踏み台にして、過去の必然と未来の可能とを弁証法的に統一したものが、現実――つまりリアリティだ」というのが、花田の説。…

「詩人」の描写、あるいは解像力

ここ3年半ほどの間、手もとにある古書雑書の類と、そこから派生するとりとめない問いに関して求めて読むものをベースにして、あれこれものを考えることしかできなくなっているけれども、そんな老害隠居化石脳の道行きでも、いくつか何となく焦点となるお題の…

新体詩と戯曲、その他・メモ

口語自由詩があたりまえになってゆく過程で、方言をその口語自由詩に反映されてゆくことも一部試みられてくるのですが、ただそれを「朗読」する場合に実際どのように発音発声していたのか、まして標準語の話しことばと混在しているような作品の場合、とかいろ…

「詩」と「戯曲」「童話」の関係、その他・メモ

「詩」と「戯曲」「童話」の関係について。雑誌や同人誌に並べて掲載されるのが普通だった時代、どのように読まれていたのか。活字になったものが読まれる際、朗読されることとの距離感が、いまよりもずっとまだ親しいものだったこと。 「創作」というくくりが「小説…

何かのブンガク、埼玉へ

「こちらの物件は築年数も浅いし、なんせ常盤中の学区内ですからね。あそこのお子さんはみんな優秀だから、中学受験なんてしなくても大丈夫ですよ」不動産仲介業者がうやうやしく説明する中、妻が嬉しそうに対応する。「うちは学区はあまりこだわってないの…

文章と映像・断片

「文章と映像」の話題がTLに流れている。以前、知り合いの編集さんから(電撃の編集さんではない)「ライトノベルのビジネスモデルは、メディアミックスを前提に組み立てられているので、どれだけ巻を重ねようとも、対象として見てもらえない、企画がどこか…

映像表現とSFの関係・メモ

富野さんもそうですが、根っからの映像作家は、まずすばらしい絵が頭に浮かぶんです。そのすばらしい絵をどうやってフィルムにしていくかが勝負になります。すると、その妨げになってくるのが考証なんです。すばらしい絵をスポイルすることがしばしばありま…

ラノベ読者の高齢化?・メモ

よくライトノベル読者の高齢化が問題になってます。元ライトノベル編集だった現一般文芸編集の方もそういっておられました。が、大学で創作を教えていて思うのですが、やっぱ、ライトノベル強えなあーーーーーーーーーと。学生に好きな小説を聞くのですが、……

「批評」の行末・断片

いわゆる音楽評論、殊にある時期以降の商品音楽についてのそれは、文学や映画、マンガやアニメなど、いずれ大衆社会化が果てしなく続いているかのようなここ数十年の過程で、市場に手を替え品を替え登場しては消えてゆく「作品」ならざる「コンテンツ」を相…

美術・芸術・文学、への疎外感について

*1 「美術」や「芸術」といった方面についての勉強が、いつもどこかよそごとになっていた。させられていた、と言った方が、正確かもしれない。 逃げも隠れもしない、天下御免の純粋培養私大文系3教科育ちのこと、本来ならそういう「美術」「芸術」方面にもそれな…

革命モノが流行らなくなったワケ・メモ

*1革命モノのアニメが近年流行しない理由を「あえて」社会評論と結び付けて騙ると、日本人はここ15年ほどの間に、東北の震災に代表される相次ぐ自然災害から生活基盤の喪失に対する恐怖と安定的な生活のありがたさやかけがえの無さを無意識に理解しているか…

本邦ポスモの呪い、の現在・雑感

本邦80年代あたりに猖獗をきわめた「ポストモダン」のありようについて、年来の大ネタのひとつではあるので、この個人的チラ裏(死語だな)に等しい場でも、まあ、折りに触れて俎板の端っこくらいにちょいちょいあげて素材の下ごしらえくらいのことはしてきて…

「詩」と「詩人」の再発見、とか・メモ

何度かすでに似たような趣旨のことをボヤいたり触れたりしているけれども、ぶっちゃけ前世紀の活字/文字しか読まない日々を送るようになって久しい。「あたらしい」ものはそれだけで何か雑音、ノイズ、ものを落ち着いて考えようとする際の夾雑物になる、そ…

雑書の行く末、のこと

大学に拉致されたまますでにほぼ3年、いずれやくたいもない雑書の山なれど、裁判の決着がどのようになるにせよ、来年3月には泣いても笑っても定年の身の上、研究室と学科実習室にあるそれら雑書古書からVHSビデオやらその他LD、DVなどのレガシーメディア再…

「火垂るの墓」異聞

今更火垂るの墓が話題似、なっているみたいなので個人的な感想を初めて見たのは中学生の頃で隣のクラスの学級文庫に入っていた(恐らく先生が入れた)物を読んだ自業自得との想いは持たなかったが、主人公に対しては怒りしか持たなかった— 那須 銀蔵 (@Nasu_si…

「無法松の一生」について

*1 先日、三浦小太郎さんが、かつて自分の書いた「無法松の影」という本をとりあげて、えらくほめてくださっていたんですが、それを受ける形で、今日はその素材になった「無法松の一生」の話をしろ、ということなので、少しお話しさせていただきます。 というの…

ルンバが死んだ

ルンバが死んだ。老衰した犬の様にヨロヨロ動く円盤はガタンという異音と共にこと切れ、ボタンを押しても、電源ケーブルを直挿ししても、電池を入れ直しても何も反応しなくなった。我が子の誕生とともに我が家にやってきた掃除ロボットの最期はあまりにあっ…

労働の現場と朗読、そして本・メモ

朝から晩まで煙草の葉を巻き巻き。こんな単純作業もうイヤッ。そんな労働者の為に雇われていたのが「葉巻工場朗読屋」でした。米国やキューバで活躍した彼らは新聞や小説を工場で高らかに読み上げ退屈な作業を楽しいものに。しかしラジオの登場とともに彼ら…

「うる星やつら」リブートと「内面描写」のパラドクス・メモ

そう言えば、「令和版うる星やつら」で内面描写が無いとの話があったけど、80年代のうる星やつらで押井守のアレンジでメガネなどが自分語りするの、あれ、原作が内面描写を端折ってたのを、当時の「物質が豊かな時代」のアンチテーゼとして、精神性も大事に…

ポリコレ有色プリンセスへの異議・メモ

ポリコレプリンセスが嫌われるのは有色人種だからじゃなくてプリンセスじゃないからだと思う。有色人種の子供だってコッテコテのプリンセスに対するニーズを満たして欲しいのにポリコレ的な言い訳パート、例えば見た目じゃないとかを混ぜ込むから、有色人種…

伏線とフラグ・メモ

小説読者がやたらに伏線とその回収を重視している傾向について考えていたのだけど、どうも最近のあれ、伏線じゃないんじゃないかと思えてきた。じゃあ何かというと、フラグです。— 太田忠司 (@tadashi_ohta) 2022年8月4日 小説読者がやたらに伏線とその回収…

あたしのビートルズ

6年4組のみんな、卒業おめでとう。最後に先生から話をします。イオンとドンキしかない国道沿いのこの街を捨てて東京に出て、早稲田大学教育学部からメーカーに入って、僻地工場勤務で鬱病になって、かつて唾を吐きかけたこの街に逃げるように戻ってきた先生…

若い日本の会、関連

ようやく「若い日本の会」世代の時代が終わるのか。長かったなー。— 仲俣暁生【自発的に凍結中】 (@solar1964) 2022年2月1日 ようやく「若い日本の会」世代の時代が終わるのか。長かったなー。 ある雑誌で谷川俊太郎にインタビューした際、石原都政批判の流…

タワマン文学、精華

*1 *2 https://twitter.com/63cities/status/1465842784850509827 新居で迎える初めての朝。田町駅徒歩13分。家賃10.2万。築10年ほどの狭小1K。せっかく東向きについた窓からはろくに朝日は差し込まず、ただ隣接建物の白く冷たい壁面ばかりが見える。最大限…

生まれは温泉街

https://twitter.com/sanjou_keihan/status/1461270363334066176?s=20 私の生まれは温泉街で、秘宝館こそないものの、幼稚園の頃までは街中にストリップの小屋があった。店の前には、いつも怖いおじさんが長い木の棒を持って立っていて、子供が寄らぬよう店…

房州権太、大槌屋になること

【思いつきツイッター小噺】房州の田舎に生まれた権太は幼い頃から性悪粗暴で、長ずるにつれ悪い仲間とつるんで強請りやたかりのような真似を繰り返していた。両親や親族が何度も権太を窘めようとしたが、その度に人並外れた怪力を振るい、まるで耳を貸そう…

タワマンノベル、実家編

「たかし君は正月は来れないのかい?中学受験ってのはよく分からんけど、小学生からそんなに勉強する必要があんのかねぇ…」。老いた母の背中は記憶の中のそれよりずっと小さく、皺だらけの肌は干し柿を思わせた。「何言ってんの、東京じゃ当たり前よ!」動揺…

メシマズ家庭の記憶

メシマズの人って、祖母がそうだったけど、手順に従わないで手を抜こうとするなんてのは序の口で、余計なことするからダメ。おでんの具に色がつくぐらい煮込むなんて絶対無理で、小学生だったわしの机をあさって水彩絵の具で色をつけてたからね。開き直って…

「ポプラ」の記憶

ポプラという九州中心のコンビニチェーンでは売ってる弁当のごはんスペースが空で、購入するとレジ後ろの炊飯器からほかほかのご飯を盛ってくれる。+30円で大盛にできる。店にもよるがこんな感じ。 pic.twitter.com/C4ef1Jg1tb— ピンフスキー (@hideyosino)…