ネットはケータイから@若い世代

 パソコン&ネット=若い世代、の図式は一方的で、実は若い世代の中で情報「格差」が広がっている、というのは以前から指摘していましたが、ある程度裏付けられてきたようですね。iPadも何も、ニッポンのIT端末はケータイによって初めて普及し、未だそこから一歩も出ていないのが現実なわけで。

 ネット文化がそれまでの文字の読み書きベースに成立していて、30代から40代がボリュームゾーンになっていること、そしてそれは政治の「無党派層」の最大公約数になりつつあること、でもそれは、ケータイでしかネットに接続しない若い世代のある層(多数派になりつつあります)の増大によって、また急激に変貌をとげつつあること、……などなど、測候すべき「現在」はとりとめなくも膨大、です。

 ケータイでしかネットに接続しない層、は本学学生でも多数派です。それはかなりの部分、文字の読み書き能力と連動していて、逆に言えば、パソコンでネットにつなぐ層は本を比較的よく読む層、ですね。

 いまやパソコンは「家電」化して、リビングに1台、という家が増えてます。でも、それは家族共用なわけで、「パーソナル」ではない、と。自分専用のパソコンが欲しい、という声は確かに学生間でも多いですが、じゃあそれで何をするか、というと、ケータイで間に合う程度のこと、なわけで。ブログやツイッターも、ケータイ経由のSNS(ミクシィなど)で埋め合わせられるし、自分でHPの管理なんかめんどくさくて、というのが「大衆化」したネットの現実です。

 デスクトップで情報「発信」、は確かに飛躍的にハードルが低くなり、誰もがやろうと思えばできる環境になったのは間違いないのですが、肝心のその「やろうと思う」こと自体衰えてしまった、という皮肉。だからこそ、生身でまず何かを立ち上げる、イベントを仲間とつくる、つまり、「文化祭」の復権から、というのは、処方箋としては間違ってないと思ってるのですが……

 

★10代、パソコン離れ…ネットは携帯で 東大教授ら調査

 自宅でのパソコン(PC)を使ったインターネット利用時間(メールを含む)は20代以上の各年代で伸びている一方、10代では減っている――。5年ごとに実施されている橋元良明・東大情報学環教授(コミュニケーション論)らの「日本人の情報行動」調査でこんな結果が出た。10代のネット利用は携帯電話が中心になっていることに加え、テレビゲームなど多様なメディアに時間を振り分けていることが背景にありそうだ。

 

 調査は6月に無作為抽出による13~69歳の全国2500人を対象として実施した。回答率は59%。メディア接触の実態についての数少ない定期的で大規模な調査と位置づけられている。

 

 調査の結果、10代の自宅PCによるネット利用時間は1日に12.8分で、5年前に比べて5分あまり減少した。内容をみると、利用時間の多くはユーチューブなどの動画だったという。

 

 これに対して、携帯によるネット利用時間は66.0分で、ほかの年代よりも長い。ただし、5年前との比較では微増にとどまっており、10代のメディア利用時間はテレビゲームやDVD、携帯ゲームなどに分散していた。

 

 一方、対象者全体ではこの5年間に自宅PCや携帯電話によるネットの利用時間はともに大幅に増えた。

 

 対象者全体の一日のメディア利用時間で最も長いのはテレビだが、5年前と比べると10代で25%、20代でも11%短くなった。「趣味・娯楽に関する情報を得るのに最も利用するメディア」でテレビに代わって首位になったのは5年前からほぼ倍増したインターネット(36%)。テレビは約30%、雑誌は約18%に低下し、逆転された。

 

 しかし、利用時間でいうと、単純にネット利用の増加がテレビの視聴時間を奪ったとは言えないようだ。

 

 対象者全体の自宅PCによるネット利用とテレビ視聴との関係を分析すると、PCでネットを使った日の方がむしろテレビを見る時間も長かった。その日の在宅時間の長短に応じて、各メディアにそれぞれ時間を配分する傾向が見られるという。

 

 また、書籍の実売総額と1人あたり国内総生産(GDP)の増減はこの15年間ほぼ一致しており、景気に左右されるという相関関係がうかがわれた。

 

 橋元教授は「10代のパソコンによるネット利用時間が落ち込んだのは意外で、10代の携帯ネットの利用も飽和状態に近いと見ている。利用時間は機器の普及の進み具合によって決まる傾向があり、電子書籍の端末が安くなれば、若い世代の利用が伸びる可能性がある」と話している。

    ◇

 「パソコンは立ち上がりが遅い」「交流サイトもケータイで見ている」「パソコンをするよりはテレビを見る方が多い」。市場調査のため、東京・渋谷のプリントシール製造会社「フリュー」のショールームに集まった高校生たちに聞いてみると、こんな答えが返ってきた。メディア接触の中心は携帯電話だ。

 

 東京都立高2、3年の女子6人。5人はメールに返信するため、風呂に携帯を持ち込んでいる。「学校では授業中のケータイは禁止ですが、隠れてメールをしたり、サイトにつなげてブログを見たりしています」

 

 月々の利用料を尋ねると9千円から2万円ほど。使い道はメール派4人、通話中心が2人。6人のうち、ふだんパソコンを使うのはオンラインショッピングをするという1人だけだった。(編集委員・川本裕司)

http://www.asahi.com/national/update/1211/TKY201012110318.html

http://www.asahi.com/national/update/1211/images/TKY201012110329.jpg