横浜は寿町ですから、例外と言えば例外かも、ではありますが、いまどきの「格差」だの「貧困」だののあり方を計測するものさしにはなるかと。
日本のスラムから家族が消えてゆく過程は、戦後とりわけ高度成長期に特徴的なもの、とされていたはずですが、いまの寿町の学童保育の親たちがどのような層なのか、気になります。おそらく、日本人だけでないことは間違いないと思うのですが。
敗戦後の戦災孤児の栄養状態を記した資料など見ると、当時のものさしで、1日1100kcal程度の摂取しかできないのは「飢餓」状態で、体重40?程度の子どもの体力を維持できる最低限、とか記されていたり。ベースとなる体力や社会的な背景が違うと、同じ数字でもまるで意味が違うなあ、と。
たとえば、こういうケータイ代と食い物が釣り合う「貧困」の内実をつぶさに記述してゆく志を、かつての民俗学ならばどこかに宿していたはず、と思います。反省を込めて。
比較「ビンボウ」学、みたいな視点は、こういう時代だからこそ、必要ですね。
▼その男性には、日々作る即席ラーメンの数が「子どもの貧困」のバロメーターかもしれない。男性は愛称・のりたま。横浜市中区寿地区にある学童保育の指導員だ。生活苦の家庭の子どもがこのラーメンを食べ、空腹をどうにか落ち着かせてきた。
▼薄給からひねり出した小遣いで業務用スーパーの5袋入り198円のラーメンを買い込む。いっときよりも30円安くなって、のりたまはうれしそうだ。5年前は1日に5杯程度を作っていたが、最近は多い日で15杯作るようになった。人気は豚骨味。
▼身なりもよく、普通の暮らしをしているように見える子が実は、空腹に耐えていることもある。ある中学生は母親に菓子パン1個買えるお金しかもらえない。だが、そのお金をケータイ代として貯(た)め、昼食を抜く。ラーメンが育ち盛りの活力源だ。
▼のりたまは学童の仕事後、ボランティアで午前0時まで勉強会を開く。冬場を迎え、受験生らへの教え方にも熱がこもる。だが、「私立高を受けられない子がいる。どうしたら…」。国の就学支援金の最初の支給は5月下旬。私立に合格してもすぐ支払うお金がない家庭の子は、公立高に落ちたら進学できない。
▼のりたまはラーメンを作り、受験勉強を教え、子どもの貧困が進行するいまを実感している。