機内にて・メモ

 殆どの乗客が乗り込んだ機内に大声が響いた。見ると農村から出てきたと見える老人と中年が5人と身なりが綺麗な10歳くらいの女の子。彼らは初めて飛行機に乗るようで、指定席な事も知らず荷物を通路や別の座席に置き、立ち歩き、周りの客も迷惑そうだがCAさんも彼らの言葉が聞き取れず苦労している。


 彼らの席は位置がバラバラでそれが理解できずウロウロしている。すると黙っていた女の子が通訳を始めた。彼女だけは都会のルールが分かっているようだった。悪気は無いけど全くルールを知らない事で厄介者になっている大人達を席に座らせ最後に私の横の自分の席に座った。手で顔を覆って俯いている。


 あの5人はお互いや女の子を気遣っていて、きっと村では標準的な大人で彼女にも良くしてくれているんだろう。それが都会では厄介者になってしまう。この事を彼女は前から知っていたのか、今初めて目の当たりにしたのか。5人に八つ当たりせず優しく冷静に対応していた。胸が締め付けられる光景。


 機内で少しだけ話した。家は広州まで汽車で一晩掛かる場所にあり(地名聞き取れず)、今までは別の親戚の場所で暮らしてたけど、お母さんが太原で働き始めたので彼女も太原の学校に通い、この親戚達もそこで暮らすという。「お母さんと暮らすの嬉しい?」と聞くと一緒に暮らすの初めてで緊張すると言う。


 心底女の子やあの家族の新しい生活が上手くいくといいなと思うけど、時々女の子の様子を見にくる彼らの声のボリュームはとんでもなく大きいし、正直マンションの隣人だったらとても厄介だ。これが彼らや中国が抱える問題だと思うし、人情ではどうにもならない多様性の難しさだと思う。