お家に帰りたい

 この「家」は、糞便垂れ流しでない中世ヨーロッパ、風邪や麻疹で人がバタバタ死なない江戸時代、公害垂れ流しでない昭和のような「過去の残像で作られた美化されたフィクション」のこと。どこに行っても「ここじゃない」になる非実在


 認知症になるとこんな風に記憶が混濁し現実と虚構の区別ができなくなる。いずれ誰もが別の病気で死ななければこうなるのだから、家(過去)に帰りたいと日がな一日嘆くだけの生物にならないよう、できる限り「振り返る必要がない生き方」をしたいなと祖母を見ていると思う。


 そうやって生きた結果早死にするならこんな未来が自分に訪れないのが確定するのだから、それはそれで幸福なことだろう。