なにかおいしいもの、のない世界

 昨日、疲労して夜、イライラして「なんかしょっぱいやつが欲しいんだよ」とつぶやいていたら、妻が「おいしいものが欲しいんでしょ?」というので「うん」といったら「アメリカにそういうものはないんだよ」と寂しそうにつぶやかれて、ごめんってあやまった。


 何なんだろう。アメリカにもおいしいものは探すとたくさんあるんだけど、この圧倒的な「足りない感」。娘が、コンビニが恋しくて夢に見ると、昨日言ってた。。。。


 人生のほとんどをアメリカで育っている一番下の娘だけが、幸せそうに何でも食べてる。。。。


 日本人として育ってしまうと、「異様に食にこだわっている」んだけど、「本人に自覚がない」という、世界の競争上非常に苦しい立場に立たされる。アメリカにきて、お昼のお弁当が、リンゴ一個とかそういうの見て、おれはここで生きていけないと涙したのを覚えている。


 日本に帰ると、バラエティーとか、ごはんやスイーツとかのお店とかの番組ばかりで、なんだこの無自覚のグルメ国民は、気でも狂ったか!!!という気持ちになる。アメリカに住んでると。多分ほかの国の人もそう思うと思う。

 ハワイでチューインガム買って食べたら一発で虫歯になりそう、かつ頭が痛くなるほど甘いというのに衝撃を受けたな。今でもチクロ使ってんのんかいみたいな。

 あとアメリカ行って思ったのは日本人ってなんでも甘じょっぱい味付けが好きなんですよね、日本人が感じる旨味には甘味からくる味の奥深さも結構重要視されてるようなのですが、アメリカ人はそう言うのに頓着しないみたいで日本人が食べると塩っぽいだけでやたら薄っぺらい味に感じることもある

 ビーフステーキにその傾向が強い気がします。ニガリを含まない岩塩と胡椒だけで焼いた、「肉!肉肉肉肉肉!」という感じのがアメリカのステーキで、A-1とかのステーキソースも酢と塩の味覚が強くて旨味成分が少ない。


A -1ステーキソースの原材料、トマトピューレ・酢・コーンシロップ・塩、何種かのスパイスとなっている。ウースターシャー・ソースに近いのかな。
https://cvs.com/shop/ingredients/a-1-steak-sauce-prodid-355499

 サラダのドレッシングとかもそうですよね、アメリカのサラダで甘味があるドレッシングは少ない気がします。サンドイッチとかもツナとかにもほんの少し砂糖を入れると日本のコンビニの味っぽくなったりしますし、砂糖が高級品だった時代に甘みの強い料理が持て囃されたと聞きますがその残り香なのか

 僕はこっちの味に慣れちゃって、自炊でも砂糖をほとんど使わないから、たまに日本に帰るとコンビニ弁当のハンバーグとかサラダの味付けが甘くて驚いたりします。国民性というか文化なんでしょうけど、歴史は意外に浅くて戦後じゃないかなぁ。戦前の「洋食」はウスターソースばかりだったようです。

 庶民が砂糖を気軽に手に入れられるようになって富国強兵の影響もあって家庭料理にテコ入れが入るのは大正から昭和初期みたいなので、この頃から戦後の復興期に定着したのかなぁとか思います。砂糖で焼く牛鍋なんかも今の日本で言うと和牛ウニみたいな感覚だったんじゃないでしょう

 あー、そういえばすき焼きの原型とされる「牛鍋」の味つけもオリジナルはだいぶ違って、砂糖や味醂を使うよになったのはだいぶ後だって近代食文化研究会さんが書いていたような。