外国人留学生の労働力化

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 雇う側のニーズは聞いたことがある。人文国際のビザだと居酒屋の接客はできない。だから主力バイトの留学生が卒業していなくなる。これをどうにか引き延ばしたい。留学→スキル労働者という政府の建前上開けてこなかった道を特定活動という便利なビザに手をつけてするっと可能にしたということでは。


 念のため。特定活動と最近できた特定技能は別の在留資格。ただ今回「特定活動」の方で留学→小売の接客(コンビニとか)という就職ルートを例外的に作って、それで時間を稼いでるあいだに「特定技能」の対象業種に小売を追加してある種の「正規化」をするというのは今後全然ありえるシナリオだとは思う。


 こういうのを議会を通さずにある種の行政の技術でできちゃう状態があるということ。きちんと見て気づかなければいつの間にか色々なことが変わっている。逆に言えばちゃんと気づいて問題があれば言えばいい。だからこそ市民は可能なかぎり賢くあろうとすべきだろうといつも思う。自分たちのためにも。

 これ、専門学校卒はだめなんでしょうか?高度専門士は、一応、学部卒と同じ扱いで就労申請できるはずではありますが、、、。でもまぁ専門学校でN1とっている学生は、普通に就職して行きますね。

 N1は簡単に取れるものじゃないし、N1取れるような子ならどこでも普通の企業に就職可能だと思います。だから企業の思い通り優秀な留学生が採用できるかどうかは分かりませんね。接客したい人がいた場合にビザが出るようになるのはいい事だと思います。シレッと一段の緩和がありそうなのがアレですが。

 良い政策です。日本語が全くできない外国人労働者を増やすより、留学生にもっと門戸開いて活用するべきです。

 大学卒はまだ選択肢がある、問題は専門卒の子たち。学校では特に専門的な事は教わらずバイトに明け暮れて卒業、学校は特定活動の書類を出さないため即帰国。専門学校は、就職ルートがないのに学生確保のために留学生の受け皿になっている。

 N1、N2、というのは日本語能力試験(JLPT)によって設定される資格のこと。
www.jlpt.jp
 N2以上の日本語能力を持っていないと、基本的に正規留学のみならず、科目履修生(いわゆる聴講生的な限定的な留学生)なども、いまや受け入れることはまかりならん、という縛りが出入国管理庁によって、ということはつまり法務省によってかけられるようになっていて、文科省はそれに追随するような流れになっているのが昨今の現状。別な言い方をすれば、外国人留学生問題というのは、単に修学履修といった大学・学校行政でなく、すでに国内治安がらみのより大きな、そして厄介な案件になっている、ということでもあるのだと思っている。

 で、このN2というのが実際にどれくらいの日本語の能力なのかというと、専門家に言わせると概ね日本語の語彙として1,000語程度、具体的には小学校中学年程度の語彙力とそれに基づいた運用力を持っている、と考えていいらしい、とりあえずは。

 もちろんこれは、日常生活上の話し言葉としての日本語、それこそ店先で買物をしたり、公共交通機関を利用したり、まあ旅行客レベルの日常生活をとりあえず自前でやってゆけるくらいのレベルを使える、ということとは少し別に、話し言葉のみならず読み書きとしての日本語、大学や専門学校で授業を受けてそれなりに理解し、レポートや試験にも対応できる程度の書き言葉としての日本語を使えて、といったことも含めての「能力」ということになっている由。まあ、考えたら当たり前ではある。

 で、そういうN2以上の日本語能力を身につけて、日本で働く労働力として労働市場に参入してくる外国人留学生というのがすでに一定量存在するようになっていて、さらにそれをふるいに掛けて優秀な層はもっと受け入れられるようにしようず、といった施策ではあるらしいのだ、ここで報道されていることは。

 ただ、地方底辺零細私大で、しかもこういう外国人留学生も定員充足率上げるために受け入れざるを得なくなっている現場の当事者として言わせてもらえば、ここで想定されているような「優秀な」外国人留学生というのは、残念ながら全体のかなり上澄みで、本当の外国人留学生問題の本体というのは、それこそかの東京福祉大学で問題化・事件化したような事案、このような「優秀な」層の〈それ以外〉の部分に関わってくるのだと思う。
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*1:外国人留学生問題は、東京福祉大学の事案などでまたぞろ世間の耳目を集めるような「事件」になってきている分、こういう報道も表に出やすくなっているのかも知れんが、ただ、これらの問題が「法務省」≒入国管理局マターになってきていることが、これまでのような「留学生」≒文科省マターよりさらに高次の、シャレならんレベルの案件になってきていることは、もっと世間の理解を求めておいていいことだと思う。

*2:この時点ではまだ、例の「札幌国際大学問題」は学内で明るみに出始めたくらいで、どげんかせんとあかん、で当時の学長と共にあれこれ対応を模索していた。で、ここからおよそ1年の後、めでたく「懲戒解雇」を喰うことになるのだが。

*3:この直後、11日に出された文科省と入管連名での「指導」の内容はこちら