サブカル女子婚活マンガ・メモ

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 別に好きじゃないけど今は彼氏いないから適当な男と付き合うのも、ぶっちゃけ見下してる男と付き合ってセックスまでできちゃうのも、その彼氏と本当に好きな男を比べてしまうのも、その彼氏の『発言の裏』を悪いように悪いように解釈しがちなのも、『ぱっとしない彼氏』を友達に紹介したら「優しそう」と評価されるのも、ぶっちゃけ自分のレベルに釣り合ってる男を格下と思ってしまうのも、好きな男とのセックスなら絶対に高く評価するベッドの上の営みなのに微妙な男がするソレだと冷めた評価を下すのも、『おしゃれカルチャー』に妙にご執心なのも、『憧れの世界』の表面に憧れてしまうのも、お笑いライブとか行きがちなのも、文化系のお仕事をやっている友人とつるもうとするのも、自分の世界をつまらないと思ってしまいがちなのも、このつまらない世界から連れ出してくれるなにかがいつか来ると漠然と思ってるシンデレラ願望があるのも、自分を客観視してると自認してるのに全然行動に伴ってないのも、『自虐』に変な自意識を持ってるのも、些細な切っ掛けで今までの不満が溢れかえって噴火するのも、自棄になって『普通じゃない行動』を取ろうとするけどそれも大して面白くもない行動だったりするのも、全部『よくあるつまらない女の話』ですやん。

 これら「よくあるつまらない女の話」が、そのまま概ね「フェミニズム」界隈に吸収されてゆき、別の「問題」に編制されてゆく過程というのもあるわけで。

 ただ、オンナの人がたは昔もずっと「夢見がち」な別の世界を生きていた、あるいは生きさせられていたところはあるわけで、それこそ「将来はお嫁さんになるの」的な定型のファンタジー(だろう、やっぱ)を〈リアル〉に生きる仕掛けの中にいることが、少なくともある時期以降のマチ育ちの「お嬢さん」「良家の娘」の定型にはなっていたはず。そういう意味では、ここで言われているような「サブカル女子」(これは割と今世紀入ってから定型化されてきたような)もまた、違う意味でのファンタジーの〈リアル〉を生きる仕掛けの中にあると言えなくもないのかも。

 だから、一方でこういう「もうひとつの〈リアル〉」をココロの安定と平安のためには必要としてくるのもまた、必然なのかも知れず。 *2
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 「サブカル女子」の今様オンナの子ファンタジーのありようというのは、そのままだと現実に、自分の人生の個別具体を設計してゆくようにはうまくつながりにくいわけで、まただからこそ各種専門学校やその他セミナーなどの類が「あなたの夢、かなえます」的な煽りと共に口を開けて待ってもいるわけで。オンナとしての「シアワセな人生」の定型が、ファンタジーの地続きとして完結していた(ように見えた)「おはなし」の成り立ちがもう寸断されてバラ売りされるようになって以降、そして雇均法に象徴されるような「社会に出て働く自立したオンナ」のイメージが新たなファンタジーとして織り込まれるようになって以降、いずれにせよ一枚岩などではとっくになくなってしまった以上、「人それぞれ」という自由放任の無惨の中へ誰もが「平等に」放り込まれるようになったという次第らしく。

 それでも、生きものとしてのニンゲンの必然として、種の保存、世代を越えた個体の再生産は求められ続ける。「結婚」「家族」という制度は、それが制度という意味での「おはなし」であるにせよ、しかし確実に逃げようのない生きものとしてのニンゲンの〈リアル〉に根ざしている「おはなし」ではある以上、どこかで折り合いをつけてつきあわねばならない点が、他のファンタジーの類と一線を画すべき特質になっている。だから、「お嫁さんになる」という一枚岩のファンタジーが寸断され、そこに至る経路などもすでに寸断されて見通せなくなっている状況でもなお、何らかの頼れる「おはなし」が必要になる、だから「婚活」というまた別のファンタジーが大きな需要と共に立ち上がってくるという概略。

 「サブカル女子」のファンタジーは、そのままでは逃げようのない現実と結びつきようのないもののはずで、それはかつての高等遊民、「夢みたいなことばかり言って生きている」ような作家志望や芸術家志望のファンタジーと基本、地続きのものではある。ただ、それがオンナの子たちにまで、しかも本当ならそのようなファンタジーにとらえられる以前に「お嫁さんになる」という強固な一枚岩の「おはなし」のファンタジーの裡に生きることでそれなりに安心立命が得られたような、世間一般その他おおぜいの個体にまで、うっかり「夢みたいなことばかり」夢見ることのできる環境を与えたことの功罪というのは、やはり立ち止まって言葉にしておかねばならないことなのだと改めて思う。例によってのいまさらながら、なのだけれども。

*1:webである時期から普通になった、マンガによる生活体験を素材とした「あるある」吐露に対しての一刀両断。殊に「女性」が「婚活」「恋愛」などを媒介に表現するそれに対する。

*2:また一方で、こういう認識も。アメリカにおいて「さえも」、将来は結婚して家庭を守るという徳目がオンナの子たちの裡に確かに宿っているらしい、という「驚き」と共に。ameblo.jp