NYCの治安・メモ

 だいぶ端折って書いたので、もう少し詳しく書くと、「あほ、ボケ、カス、お前の母さん出べそ!」と怒鳴るまでにはだいぶ時間があります。


 犯行現場は39th St.の8Aveと7Aveの間です。この辺のAvenueはわーわーしてますが、横に繋ぐStreetは妙に人が少なくなるのがミソ。Stranger 率が高いのもミソ。


 タイムズスクウェアの裏手で、かつポートオーソリティという巨大バス発着ビルの裏でもあるので、知らない人同士が密集する。旅の恥はかき捨て隊 vs よそ者をカモにする隊が拮抗する。危ないと思われてるイーストハーレムなどは土着コミュニティが形成されてるので顔見知り同士で実際は危なくない。


 ポートオーソリティの周りは夜になると、ドラッグでラリるれろな人があちこちで転がり始める。夜歩いてると、売りに来るなら分かるけど、持ってないかと買いに来る奴がおるくらいユーザーセントリックな地域。持ってないっちゅうに。お腹すいたから1ドルくれみたいなのはしょっちゅう来る。持ってる時はやるけど、現金持たずに歩いてることも多いので、今ないわというと、こういう人達はあっさり引き下がる。


 犯行に及んだのは20歳前後に見える女1、男3の若いグループ。最初に女が56th Stはどっちときいたので、あっちと答えると、どのAvenue ?ときくので、あ、これおかしいと思った。


 全く無意味な質問。立ち去ろうとすると、男1が前に立ちはだかって「お前はどこにも行かない」と呪文のようなことを言い始める。「何を言うてんねん、忙しいんじゃ」と言うと、「金を置いていけ、お前はどこにも行かない」とまた催眠術でもやってるような声で続けとる。


 こっちの身体にすれすれまで自分の身体を接近させてきて同じことを繰り返し始めたので、これは嫌な感じだとアドレナリン発射音が聞こえたような気さえした。最初の一撃に集中して「どけ言うてるやろ、ボケ❕」と怒鳴ると、男1は引き下がってナイフを出しやがった。あかんわ、これ。


 ナイフから目を離さないように後ろに下がりながら逃げ道を考えた。ここまま歩道を逆走しても追いつかれると思ったので、車道に飛び出して走ってくる車を止めて渡ってから何度も後ろを確認しながら人通りの多い8 Aveまで逃げた。


 8Aveに出たらパトカーが止まっていたので周りに警官がいると思って探していると、道に座ってるホームレスが、ヘイ何探してるんやと声をかけてきた。事情を言うと、911に電話せえと言う。確かにそっちの方がはやいか。911に電話すると、すぐに警官が行くと言ったがなかなか来ない。


 結局、2時間待った。その間にパトカーは4回通り過ぎ、2人警官が通り過ぎた。911に電話したんなら待っとけと言うだけで全く何もしない。ホームレス2と3が来て話の輪に入る。お腹すいたと言うので1ドルずつやった。ホームレス1はお腹すいてないけどタバコがすいたいというので1本やった。


 昨日はバッグを女の人がここで引ったくられて911に電話したけど、3時間待ったよとホームレス1が言っていた。それからみんな武勇談を披露し始めた。全人生の入った携帯電話を盗られたとか、シェルターに住んでるけど、汚い下着も靴下も盗られるとか、自分は物乞いするけど盗みはしないとか。


 警察来たら気をつけないと自分が責められるぞと警告もしてくれた。いっつもそうなるらしい。あいつらはあんだけ武装してなんもしてくれんと呟いていた。
結局、3回911に電話してやっと来た警官二人はこの世の終わりみたいなめんどくさそうな喋り方で、まるでこっちが作り話をしているような扱い。


 やや嫌な予感はあった。たまたま犯行グループは黒人だった。それを911に電話した時しつこく確認された。そしてやってきた警官は黒人だった。また非黒人によるでっち上げと思われたのだろうか。黒人を非難するために911に電話したわけでないのになんか居心地が悪い。


 正式に届けを出すかと警官はきいたけど、2時間待ってアホみたいだがもうええわと言った。お金をとられたわけでも怪我をしたわけでもない。届けてもしゃあない。結局、この辺りの見回りを強化するという話でおわった。
終わるとホームレス達がこっちをニコニコして見ていた。彼らはみんな白人だった。