QJ と小山田佳吾問題・メモ

小山田圭吾がいじめ告白をした90年代前半の「クイック・ジャパン」で私も仕事をしていた。小山田インタビューを担当した編集者も知っている。あの当時もそれなりに衝撃的な記事だったが、炎上することはなかった。ネットが未発達だったこともある。


90年代は95年の前と後では全然ムードが違う。私の記憶では、90年代前半に流行った「悪趣味」「鬼畜系」ブームの中で、その変種として受容されたのではないかと感じている。鬼畜系の出版をよく出していたのがデータハウス太田出版で、太田出版からは「完全自殺マニュアル」がベストセラーになった。


私の印象では94年までは80年代の延長で、80年代は「明るいニヒリズム」の時代だった。この辺りを説明しようとすると、Twitterの短文では難しい。60年代の高度経済成長の終着点が80年代末のバブル経済で、これは91年に弾けたが、本当に不景気の実感が始まったのは98年からだ。


しかし95年に阪神大震災オウム事件があり、時代の「空気」がガラリと変わった。80年代から始まった「明るいニヒリズム」「悪趣味ブーム」「鬼畜系」は、それからも出てはいるが、未曾有の天災に加えてオウム事件という、80年代のパロディのような現実の大事件によって霞んでしまった。


私は鬼畜系の仕事はしなかったが、そういう記事が載る雑誌で仕事はしていたし、強いて言うなら「悪趣味系」ではあったと思う。95年のオウム事件で、私の中の80年代、広い意味での日本の戦後は終わってしまった。95年以降のその状況に表現として対応できたのは、「新世紀エヴァンゲリオン」だけだった。

小山田圭吾のいじめ告白が掲載された「クイック・ジャパン」95年7月号。なんとなくこれが最初の印象があったが、ロッキング・オンの記事の方が一年早かった。


初期のQJはほぼ不定期刊だったから、7月号は7月に出た(実際は6月)ということですね。第3号というのが正しいかも。