コロナ禍と国際海運・メモ

 コロナ禍の海運の乱れがいつまで続くのか心配している方も多いと思います。今日はこの点を書きます。長文お付き合い下さい。マレーシア港湾当局は「少なくとも2022年上半期まで続く」と述べています。ちなみにマレーシアの2大港のクラン港とタンジュンペラパス港は共に世界20位に入る巨大港です


 世界20位以内に複数の港湾を持つ国は、中国以外でマレーシアしかありません。言わばマレーシアは世界の海運の要衝であり、港湾の業界では世界的権威の1つでもあります。その当局が2022年上半期までは海運の乱れは続くと言っている状況です。ただそこには「少なくとも」という言葉が入っています


 つまり更に長引く可能性が高い訳です。例えば世界の海運というものは、1年を通して忙しい時期とそうでない時期があります。一般的に言って、9月~12月頃までは欧米のクリスマス需要で忙しくなり、12月~2月頃までは中国の旧正月の需要で忙しくなります。そして3月以降にやっと需給が一段落します


 こう考えると、2022年の6月末までに貨物の動きが落ち着かなければ、すぐに9月以降のクリスマス需要、そして旧正月の需要に突入してしまいます。そうなると2023年の3月頃までは、海運の乱れが続く可能性が高い状況です。港湾当局もその可能性を示唆しており、私自身もそうなると予想しています


 もしあと1年以上この海運の乱れが続くとなると、まず大変なのは荷主であるメーカーや商社です。特に日本は抜港が非常に多いので、日本の荷主は海上運賃の高騰に加え、そもそも船が来ないので予約が取れないという二重苦が続きます。これは日本経済全体にも大きなダメージを与えるかもしれません


 次に大変なのは消費者の皆様です。海上運賃の高騰が続き、その水準がコロナ前のそれにはもう戻らない事になると、多くのメーカーや商社が物流費の高騰を吸収できず、商品の値上げに踏み切るでしょう。現段階でもその傾向はありますが、今後はそれが更に強まる可能性が極めて高い状況です


 一方でこのコロナ禍で優位に立つのは船社です。既に多くの船社が過去最高益を上げていますが、今後も高い利益水準が維持される可能性は十分にあります。ただその反面、それが株価に今後も反映されるかは不透明です。何故なら海運業はITベンチャーなどとは異なり、既に成熟した市場だからです


 現在船会社の売上が伸びている主な理由は需給の逼迫であり、ITベンチャーの様な市場の拡大ではありません。ご承知の通り株価というものは、将来の出来事を折り込み済みの価格に落ち着くものです。海運の乱れが今後も続く事が容易に予測できる以上、株価が今年の様に急伸する可能性も低いでしょう


 これは私達のコンテナ業界にも言えます。そもそもコンテナリースというのは寡占化が進んでいる業界で、大手数社で世界売上の過半数が占められています。また元々利益率も高く、コロナ禍の前から営業利益率30~50%台は普通の業界です。ただこれも船社と同じく、急成長する業界では全くありません


 需要が高まれば利益率が更に高まりますが、一方で市場が急拡張する訳でもありません。こうなると「儲けられる時に儲けよう」という意識が働きます。弊社も大手コンテナリース会社の関連会社なので良く分かりますが、今大手は強気の価格設定で、できる限り長いタームの契約を結ぼうとしています


 この点で私達の業界は儲けさせて頂いている立場なので強くは言えないのですが、これは決して健全ではない状況です。ただ海運の仕組み上、仕方ない事でもあります。それで今後ビジネスや投資の計画を立てる際、今日の点にご留意頂けるなら幸いです。長文のお付き合い、ありがとうございました(