クオモのスピーチのリアリティTV性・メモ


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1) しばらくクオモ会見のツイートしてなかったので、数日分まとめて見返してると、この会見が must-see TVになる理由がよく分かる。クオモ氏はものすごくゆっくり喋るのだけど、「スピード感」を感じるのだ。毎回必ず何か以前言ったことが進んでる。そして、漠然としたものが次々と形を表し始める。


2) これは人気TV 番組の構造と同じではないか。しかも、敵はリアルにいて、どう出てくるか分からない。感染者のピークが過ぎて少し経った頃、クオモ氏は、実は毎日怖くてしょうがなかったと言っていた。できることは全てして、それでも曲線の上昇が止まらない最悪の事態が起きたらと。


3) ソーシャルディスタンシングが実際どれくらい効果があるのか誰にも分かっていなかった。それが怖かったと。どうでるか分からない敵、クオモが毎回出す新しい作戦、そして視聴者の身の回りで毎日大量の人が現実に死ぬ。NY州民はリアリティTV を超えて、リアルTV に突然ほりこまれたのだ。


4) 逆に「スピード感」が連呼されるのに全くそれを感じさせない国の原因の一つは、昨日も今日も(そして多分明日も)何も変わってないからだろう。動きがなければ、スピードという概念が成立しない。見えない敵は見えないまま。何が起こってるのか誰にも分からない。凡庸で退屈なドラマのようだ。


5) 雄弁だったらいいのかとクオモ氏を非難してる人がいるが、喋ってるところを見たことがないのだろう。以前ツイートしたコミュニケーション専門家が言ってたように彼は全然雄弁じゃない。構文や単語の選択もネイティブとは思えない。イタリア語を第一言語として育ったのだろう。


6) あまりにゆっくり喋るので、録画を1.25倍速で再生して見てるがそれでも秘書のメリッサさんよりのろくて、流れるような喋りのうまさではない。結局、スキルの問題ではなく、思考の過程や、その中身とそれに基づく行動、時折現れる感情などが総合的に見てる人を信頼させるのだろう。


7) 脇役の魅力も大きいと思う。フワーとした男3人とシャープな女1人がクオモ氏を支える。いろんな会見を見てるけど、こういう構成が他にない。みんな一人で喋っている。強いて近いものをあげるとしたらトランプのコロナ軍団くらいだ。違うのは彼らの場合は上司が一番バカに見えるということだ。


8) メリッサさんの肩書きは知事の秘書だが、昭和のお茶くみをするイメージで考えると間違える。州政府内で選挙で選ばれる知事以外では最高位のポジションなのだ。NY州の権力に最も近い女と紹介されている記事があった。

9) 彼女は午前0時に寝て、毎朝午前3時45分に起きて、寝ている間に入ってきたデータをまとめてクオモへのブリーフィングを用意して、オフィスでその日の会見のストーリーをクオモ氏に提案する。だから、あのスライドは非常に短時間で誰かが作る。ずっと思ってたけど、あれには荒っぽさが残ってる。


10) 他の男三人はそれぞれ異なった分野の専門家でみんな、なんとか博士だとクオモ氏は言っていた。しかし、全体を把握してクオモチームを動かしているのはメリッサさんなのだ。トランプチームのファウチ博士と似たポジションだと書いてる記事があった。彼女はこの地位に最年少で登りつめたそうだ。


11) 彼女の父親はロビーストで彼女は早くから政治家ではない州政府トップの地位を目指してたそうだ。コーネル大学MPAを取得してヒラリーの選挙運動に参加して、その後もずっと公的機関で仕事している。MPAについては以前ツイートしたことあるけど、合理的な政策決定をするツールを学ぶ学位だ。


12) アメリカではこういう訓練を受けた人を毎年大量に生み出して、各レベルの政府に入っていく。MBAの公共経営版と考えたら分かりやすいかもしれない。日本の官僚制度の問題の一つはほとんどが低学歴で埋められていることだと思う。素人集団が公共経営の訓練を全く受けずに何でもかんでもやらされる。


13) だから、前近代共同体みたいな政治の集団に抵抗するツールも論理も出てこず、丸腰で泥沼に引きずり込まれる。出世した同級生の10分の1くらいの給料であんなことやってたら、病気になるか、悪いことするか、変態になってもおかしくないだろう。メリッサさんの貯めた資産は3億円、年収は2200万円。