少女漫画的顔つき、の変遷

少女漫画は昔から目が大きくヒロインが女子大生になっても目の大きい童顔で(「フランス窓便り」を思い出して)、母親もほとんどしわのない童顔です。ほうれい線のある母親はなかなか出てきません。童顔の少女、女性の原型は少女漫画です。読者は少女で、男性の願望から童顔が生まれたとは言えません。


あまり漫画を知らない人に勝手な心理分析をされても迷惑です。私は投稿時代は今より小さい目を描いていましたが、その絵ではダメと言われて目を大きくしてデビューできました。アシスタントをした先生には、子供は目の大きな顔が好きなんだ、とプロ意識を叩きこまれました。子供が童顔好きなのです。


目の大きい童顔とは別に、昔は白人への憧れがあり、日本人を白人のように描く少女漫画も人気がありました。特に少し読者年齢が高くなると彫りの深い顔が好まれました(「ぶ~け」を思い出して)。近年は白人顔が廃れました。欧米への憧れが薄れたからではないかと思います。釣り目童顔の日本人でヨシ。


私が漫画家になりたいと思った理由は少女漫画が女性の仕事だったから。お茶くみも宴会もなくデビュー当時はすでに男女同一原稿料でした。だから希望を持ちました。女性向けは恋愛ものが多いので恋愛に伴う性表現も仕事です。男性を狙って性表現を規制すれば仕事を失うのはむしろ女性になります。


一昔前は、彫りの深い、鼻筋の通った絵が流行していました。「動物のお医者さん」を思い出して下さい。今は顎が小さく鼻は小さいか省略、口も小さく、唇にも口紅なしの絵が主流です。こういう流行は漫画家一人がどうにかできるものでなく、そういう絵に近づけるしかありません。小児性愛は全然無関係。


日本人なら漫画の絵が時代の流れとともに変わってきていることくらいわかると思いますが、外国の方には全部子供に見えるかもしれません。もともと東洋人は童顔で海外に行けば子供料金で通用するという話も聞きます。漫画でデフォルメすればさらに童顔になります。東洋の漫画は童顔ですが大人です。

30年以上前新人時代にアシスタントをした少女漫画の先生は白人の子供の写真を見て描いていました。日本の子供より可愛いからだそうです。背景もパリやニューヨークの写真を使いました。「日本は汚いからパリみたいに描いて」という指示もありました。今は白人コンプレックスが薄れ良かったと思います。


私は若い頃は白人コンプレックスが気になっていました。どうして白人の子供のように描くのか、と思いながら働いていました。その後少しずつ釣り目細目色黒太めのキャラクターも支持されるようになってきています。「吉祥天如」、「カンナさーん!」、「ピーチガール」など表現の幅が広がっています。


今は主役級は童顔が流行していますが、脇役のキャラクターは老若男女はっきりと描き分けられ進化しています。絵描きは言われるまでもなく勉強を積み重ねており欲がありますから、進化は止まりません。やがて商業もさらに造形の幅が豊かになると信じています。今まで進化し続けてきたようにこれからも。