萌え絵とその変遷・メモ

萌え絵はもう死語になりつつあるので便宜上仕方なく使うけど、萌え絵が女性蔑視という話がここ2年くらいで急に出てきておかしな主張が力を持ち始めてる様な気がしてならない。似た絵柄を描く人が韓国中国に留まらずアメリカにも沢山いますが、では世界中で女性蔑視をしてるのかと言えば違うでしょう。


萌え絵の定義を90~00年代に流行った美少女絵からの系譜の絵とするならば、萌え絵はエロゲームに使われていた絵柄、だから女性を性的に扱う絵、女性を性的に扱えば男性が現実の女性も性的に扱う、女性蔑視を助長するという様な偏見と飛躍だらけの理路が今は、萌え絵は即女性蔑視だと短絡している。


日本には20年前に成人向けのゲームで流行った絵柄があるからその系譜にある絵柄は女性蔑視だと言ってしまえば、台湾の蔡英文さんも萌え化するほど街中に展開してるサブカルチャーの絵はなんなのか。場所によって文脈が違うので日本では女性蔑視になるけど海外ではならないなんて話は通用しませんよ。


今の日本の10~20代のデジタルネイティブと呼ばれる人たちはTVよりもネット配信を観る世代で、Vチューバーも抵抗なく受け入れているので元々が成人向けで流行った絵柄だと知っていようがいまいが既に当たり前になっているので、世代間ギャップとして印象が海外と似た様な物ではないでしょうか。


萌え絵の流行がどんな風に生まれたか、遡れば夢野久作さんや中原純一さんの頃まで遡れるし、手塚治虫さんが漫画ブームに火を付けて、高橋真琴さんから花の24年組の少女漫画黎明期、少女漫画から影響を受けた吾妻ひでおさんのロリコンブーム、その影響を受けた少年漫画少女漫画の流れがある訳ですよ。


80年代に少年漫画は、まつもと泉さんや桂正和さんの絵柄が一気に流行した時期がありましたが、いのまたむつみさんや高田明美さんといったアニメーターさんからの影響もありましたし、少女漫画でも吉田秋生さんがこの流れにいらっしゃったと思います。別の分野同士で相互に影響しあってたと思います。


80~90年代は好景気且つ、同人即売会が隆盛を誇った時代でもあり、少年漫画から影響を受けてBLの前身、やおい文化が形成された同人界隈の作家さん達からCLAMPさんや高河ゆんさんといった方々が商業誌に登場するのも、後々の活躍を見ると影響は無視できないでしょう。


90年代に少女漫画も種村有菜さんの絵柄で一気に変わった時期がありましたけど、種村有菜さんが影響を受けた池野恋さんや水沢めぐみさんの絵は近年の萌え絵に近い流れがありましたし、ここを認識しているかどうかで萌え絵の話に少女漫画がどう関わっているかの評価が変わってくる所はあると感じます。

ここまでの絵柄の流行の変遷があった上で90~00年代、成人向けゲームで多数の原画家さんが色々な影響を受けて萌え絵の流行が出来上がったと私は認識しています。手塚治虫さんの漫画ブームで少年漫画、少女漫画、劇画、カートゥーン系と分かれた系譜が集合したと思います。


萌え絵が確立された時期ですぐ思いつくのは門井亜矢さん、七尾奈留さん、樋上いたるさん、みつみ美里さん、いとうのいぢさん、CARNELIANさん、西又葵さん、鈴平ひろさん、蒼樹うめさん、ごげどんぼさんが活躍されたと認識してますが、この方々が90年代少女漫画の影響を受けてない訳がない。


90年代は新世紀エヴァンゲリオン貞本義行さん、美少女戦士セーラームーン武内直子さん、00年代は最終兵器彼女高橋しんさん、涼宮ハルヒの憂鬱いとうのいぢさんといった方々のヒット作で描かれた画風も、その後の少年漫画や少女漫画や、成人向けゲームにまで強く影響を与えているでしょう。


00年代は同人ゲームが隆盛を誇った時代でもあり、低コストで誰でもゲームが創れる時代に入って月姫や、ひぐらしのなく頃に、といった伝奇物の流行の登場もこの頃です。
さらにはボーカロイドやオンラインゲームで韓国や中国の絵師さんと日本の絵師さんが強く相互に影響し始めた時期でもあります。

「萌え絵」は死語ではないかという話。色気を含んだ可愛い絵のニュアンスで「二次元」がそれに当たるかなと思って比べたけど、流石にスラングで差が大きすぎるので「萌え」「二次元」で比べたら7年前に逆転してる。双方+絵のアンド検索でも今は大差がない。もう「萌え」が死語になりつつあるのでは。

「二次元」は2011年~2015年にかけて上昇し続けて下がってるんですよね。
「萌え絵」の絵柄が一般的になりすぎて「萌え」という語を使わなくなってるのかもしれない。
でも「萌え絵」が「エロ絵」に使われてる事を知ってる人が「萌え絵」を「エロ絵」のマイナスイメージで使い続けてるのかも。

「エロ」に関しては数値が大きすぎるので表は入れなかったんですが「二次元」と同じで2009年辺りからずっと右肩上がり下がってないんですけど、2009年~2011年の頃にインターネットに革新的ななにかがあったんでしょうか。

確かにそういえば、炎上騒ぎのある時ぐらいしか「萌え絵」って語をわざわざ使わなくなってるし、普段は「イラスト」とだけ言って「萌え絵」と言わなくなってる感触はある。


「萌え絵」は絵柄の言葉で「二次元」は一般名詞+漫画やアニメを指すコンテンツ全般の総称のスラングなので、両者のニュアンスが違っててちょっとあまり意味のない比較かもしれない。でも「萌え」の言葉自体がほとんど使われなくなってきてる事は分かった。 twitter.com/ymils_y/status…


現実を見ていれば「萌え絵」と呼べるだろう絵柄はどんどん社会に増えていって一般化してるので、「萌え絵」という単語が使われなくなってるグラフを見ただけで「萌え絵」の絵のジャンルは衰退したんだ、という解釈は出来ないですね。むしろ逆。

10年代までに内容の残酷さと絵柄の可愛らしさが釣り合わない魔法少女まどかマギカの様な作品が多数登場する様になるんですが、この辺りになると萌え絵という言葉が廃れるほど一般的になってきます。検索上でも「萌え」という単語がどんどん使われなくなっていきます。

「萌え絵」は死語ではないかという話。色気を含んだ可愛い絵のニュアンスで「二次元」がそれに当たるかなと思って比べたけど、流石にスラングで差が大きすぎるので「萌え」「二次元」で比べたら7年前に逆転してる。双方+絵のアンド検索でも今は大差がない。もう「萌え」が死語になりつつあるのでは。

こういう流れを並べて見てみると、萌え絵というのは成人向けゲームの文脈はほんの一部だけで、色んな分野が流行に関わってる様に思います。もう漫画絵、アニメ絵の一部とでもいう画風と思いますし、漫画、アニメ、ゲーム、小説、音楽、またそれ以外の分野の影響で萌え絵は形成されたと思いますよ。


中には黒目が大きく口が小さく幼く見えるディフォルメは、自己主張をせずに守られる立場で男性を立てるお人形や大和撫子を顕現させた姿という評価で萌え絵を分析する人もいますけど、萌え絵で描かれてきた人物が主張せずに守られる立場に甘んじてきたキャラばかりかと言えば全くそうではないでしょう。


萌え絵が女性蔑視というのは一部しか見てない古すぎる意見だと思います。
日本は海外と比べて特異で同人でもイラストレーターでも女性の方が多いですし、アジアでジェンダーギャップ1位の台湾のサブカルチャーの発展の仕方を見てもジェンダー問題なんて的外れで全く当てはまらない意見だと思います。


もっと代表的な人はいらっしゃったと思いますし外せない作品もあったと思いますが、近年だけ見てもVチューバーの視聴者層を見るに、30代より上の人と比べて若年層のサブカルチャーに対する印象はまるで違うと感じますし、ジェンダー問題なんて無く、単なる好悪の話ではないでしょうか。近年でもスーパードルフィー中原淳一ぱたーん版が発売されてますので、萌え絵の系譜の話では絶対外せない人だと思います。


萌え絵の流行がどんな風に生まれたか、遡れば夢野久作さんや中原純一さんの頃まで遡れるし、手塚治虫さんが漫画ブームに火を付けて、高橋真琴さんから花の24年組の少女漫画黎明期、少女漫画から影響を受けた吾妻ひでおさんのロリコンブーム、その影響を受けた少年漫画少女漫画の流れがある訳ですよ。