アニメ絵における「美」の誤解・メモ

「アニメ顔」てやつはこれから先もドンドン白人像から遠ざかる方にしか進んでかないですね。鼻口をどこまでも消していこうとするベクトルじたいは不動のものだから。今世紀はじめ「現実に美しいとされるEライン」をブッチしたときもう後戻りできない分水嶺を超えたように感じてる


鼻口をどこまでも消して目ド集中にするのはただのいち画風でなく根強い日本の文化的なものだから、これがこの先唐突にひっくり返ることはないですよ。むしろ海外の漫画絵が日本の奇形スタイルの影響を受けてしまってく気配の方を感じる


鼻口を消し去り目だけ強調したい…てのは現実とかけ離れても追い求めたい二次元上の美のベクトルであって、それを求めない人物像では「美の気負い」がなくなり人間の顔に近づく。写実的な画風で描かれた顔がなんぞの人種に似てるなんてあたりまえで、美の志向がどこにあるか測る材料にはなりません


そもそも「現実とかけ離れても追い求めたい美」の対象が「若い女性」に酷く偏ってて、ひとつの視覚表現のなかで、男や年配や「美しくない若い女」が比較的写実寄りの造形をしていながら、所謂「ヒロイン」ポジションの顔立ちになると強度に記号的になる取り合わせが非常に多い
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「キャラクターデザインは男・女に掛ける意識が分断されており、女性の方だけ旧来的な客体視線で造形する」について。風貌のレパートリーがひどく乏しいのは「作家にとっての理想の美人像」がそもそもそんなに幅がないものだから。ベスト美人だけを置きたくて置いてるから。
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でもって現実リミッターが外れた記号顔美人はおのずとハンコ顔になるんですわ。「男性はいろいろ描き分けてるのに美人女性はどの作品のどいつもこいつもいつも同じ顔」。世の中に溢れかえってる。だってその作家が追い求めて完成した「理想の美」はひとつなんだから仕方ないw 欲望に忠実なんですわ。

「個々の造形には"美"を投影しないようにしよう。主人公にもヒロインにも、女性の誰にも」とでもしない限りは、おのずとこうなる


「アニメ顔は白人に近い」ていう頓珍漢なヨタ話は定期的に起こり絶えることはないが、そんな幼稚な妄言を吐きたがる子はたいていそこで終らず「なぜから、日本人は白人を美しいものとして憧れているからだ」という本題を主張したがる。


いいやまったく違う。カケラも合ってない。だって追い求める「美」はもはや人間の容姿の域に留まっておらず、二次元のうえでのみ成立する極端な奇形バランスにとっくに突入しているからだ。美に執着してないオブジェクトなんかまるで関係ない。作中で「美」とされる者がどうあるかでしか測れない。

眉間も鼻筋もすこぶる低く、鼻柱が垂直近く立ち上がった凄まじい「ブタ鼻」で、上顎がせり出しEラインは逆側に突き抜ける。二次元上で追及され続けてきた「美」は、「白人的な美」と完全正反対の方向につき進んでる。「無意識の根底に白人の美への憧れがある」なんて妄言はまったく酷い間違いです。


「ブタ鼻が美しいからブタ鼻にしてる」でなく「抑揚がないことが美しい」から「鼻先から唇上端までの抑揚をなくしてる」結果的にブタ鼻になる。現実にもライティングや後加工でカゲを飛ばしまくってつるりん顔に見えるようにするでしょ。創作ではじかに顔造形をイジッてそれを達成しようとしてこうなる


上顎が前にせり出したサル顔、ネコ顔は「上顎が前にせり出してることが美しい」でなく「鼻口周りに抑揚がないことが美しい」から「鼻先の方に上顎を近づけて凸凹をなくしてる」んです。「アニメキャラの鼻は高い」て頓珍漢もよく聞くが、いいや鼻はむっちゃ低い。せり出した顔に低い鼻が乗ってんだよ。


「アニメキャラの鼻は高い」と真顔で言い出す子は、その時点でアニメキャラの顔造形がまるで理解できていないということが明らかになる。「私はなんとなく思い浮かべた偏見だけでモノを言っています」という自己紹介をしてくれている。


「"抑揚がないのが美"というなら、そもそも鼻をとっちゃえばいいのに、なんで鼻先の位置だけキープしてその周囲をむりやりなだらかにしようとするの?」て疑問が出るはず。これ昨日も言ったけど、奇形加工がドンドン進むその土台…昔むかしのおおもとの顔では鼻が高かったから、やと思いますよ。


こういうのは誰かがとつぜん発表した記号でなく、事前に存在した土台をアレンジして今の顔がある。その土台はさらにその前にあった顔を雛形にして創出された。たとえるなら「セーラームーンの顔をなだらかにしてプリキュアの顔ができた」ようなもの(※個々のデザインがそうだというのでなくたとえ)


白人的な美のセンス…たとえば「頬骨の出っ張りが美」なんて感性はいまの二次元記号絵にはカケラもねえんですよ。しかし昔はあった。「現実の投影として絵のうえの美があるのだ」という意識がまだ高かった大昔には…
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成功例…というか不協和音を起こすことなく盛り込めた例は湖川氏はじめビーボォー系の頬骨記号じゃないですかね。目の下のカゲ色をナナメにズバッと切り込むように落とす技法。頬骨の隆起もなめらかな立体物の抑揚なので、実線を引いてしまうとどうしてもドギツすぎ、カゲの置き方でしかやりようがない

ダグラムの頬の線は頬骨の凸であって瘦せこけた凹ではないんですよ、ということです


頬骨の張りというのは美の基準が欧米化した日本でもついに定着しなかった観念のひとつだと思うけど、そこを記号絵で表現しようとしても、実線処理してしまうとどうしても痩せこけた頬として復号されてしまうものなので、これは失敗例。

白人的な美というなら、横に映ってる秘書の人より赤毛の楠木さんの方がはっきり「白人的美人」だもんね。

「秘書」じゃねえな「副官」か…いや、役名みたら「楠木助手」になってるわw こういうのでまたも「顎が細いから白人顔」なんてトンチキ言う子が出てくるんだが、これも鼻先と同じで、白人骨格を形容するときの「顎が細い」とはまるで別種。顎は丸くて、唐突にとんがりが生えて頂点だけ尖ってるんよ。


白人の細い顎というのは頭蓋骨も含めた左右幅と前後幅のアスペクト比の高さ。うえからみて四角っぽい箱型の骨。こういう奇形顔はそうでなく、比較的日本人(東アジア人)的な丸い土台のさきっちょだけとつぜん尖ってる。「白人は肌が白い」「白人が顎が細い」「白人は目が大きい」「白人は鼻が高い」…


そういう「言葉のうえの白人美の形容」にすっかり呑まれてしまい、それこそ実像なんかお構いなしに「肌が白いから」「目が大きいから」「顎が細いから」「鼻が高いから」これは白人に近いイメージなんだ…なんて短絡しちゃうのは、その話者自身が強く「白人=美」という観念に固まってる証拠なんです。


「低いブタ鼻の鼻先だけ指でツマミ上げたように尖ってる」
「丸い顎の顎先だけ指でツマミ上げたように尖ってる」


そういう「言葉のうえでだけ」一致してる形状をみて「鼻が高いから白人」「顎が細いから白人」って堂々言っちゃうようなの、モノ凄い白人コンプレックスぶりですなぁ…


「言葉のうえでだけ」の一致、たとえば塩の辛さと唐辛子の辛さは違うのに、言葉だとどっちも「辛い」になるからって「海の水は辛い。つまり唐辛子に近い」て真顔で言っちゃうのは滑稽でしょ? 肌の「白さ」、鼻の「高さ」(そもそも高くすらない)、顎の「細さ」なんかではすぐそんなアホの子になりがち


実像なんかそっちのけで、実像を便宜的に言い表しただけの「言葉」の方に飲み込まれるまま飲み込まれて観念を固めてしまうのは、まあストレートに偏見てやつです

立体造形として確かめようとしてみれば「アニメ顔は鼻が高い」なんて誤認は晴れると思いますよ

現実の人間に奇形顔様式をあてはめるなら、もちろんどの人種にも似つかず「マスクをした顔」のバランスこそが目のサイズ以外かなり近いんです。上顎が前にせり出しEラインが逆に出っ張り、鼻背がエグれ鼻翼も鼻腔もなく、しかし先端だけ小さく尖ってる。ここにクチとして小さく横線引けばほぼアニメ顔