男の子への戦争

 近頃の学校では、普通の男の子であることは甚だしく不利な属性である。男子は粗雑で落ち着きがない。中には、騒がしくて手に負えないと思われている男子もいる。でも、よく考えれば、それはどこにでもいる男の子ではないのか?


 20 ~ 30 年前なら「男の子らしさ」と考えられていた性質について、学校はますます不寛容になっている。心理学者のマイケル・トンプソンが適切に言い表している。「学校では女子の振舞いが究極の基準となっている。男子は欠陥のある女子として取り扱われている」


 その結果、こうした「欠陥のある女子」は学業不振に陥っている。女子に比べ、男子は成績が悪く、優等賞を得ることも少なく、大学進学率もはるかに低い。男子の成績は下がり、女子の成績は上がっている。ますます知識本位の経済になっていくなかで、これは社会が発展するための良い処方箋ではない。


 小学校の教室をもっと男の子の過ごしやすい場所にするためにどうすればよいのか、私たちは考え始める必要がある。良い出発点となるであろう 4 つの改革ポイントを以下に示そう。


1. 男の子 を読書好きにする。

 年齢や民族集団にかかわらず、全国読解力テストの男子の点数は女子より低い。言うまでもなく、読解力は学業や職場で成功を収めるために非常に重要だ。英国で行われた大規模な研究では、少女は小説、雑誌、詩を好み、少年は漫画やノンフィクションを好むという予想通りの結果が出た。

 『大草原の小さな家』を読まされたときにはどんより曇っていた少年の目は、『ギネスブック』には釘付けになるかもしれない。興味のある書物を与えれば、少年はそれを読むのだ。男の子を虜にする本についてアドバイスが欲しいなら、guysread.com を参考にするとよい。


2. 男性的な想像力を刺激する。

 著名な文章表現インストラクターのラルフ・フレッチャーは、「告白的な詩人」こそが教室における理想だと考える教師が多すぎると主張している。感情や自己開示の詰まった個人的なストーリーだ。一般的に女の子が書くことが多いこうしたストーリーは褒められる。

 ところが、スケボーの競技会や都市を蹂躙する怪獣などを描くアクション・ストーリーは褒められない。私は最近、南カリフォルニアに住むジャスティンという小学 3 年生の話を聞いた。彼はSF、海賊、戦闘物が好きだ。心配した教師は、8歳のジャスティンが描いた絵について話し合うため両親を呼び出した。

 その絵には、刀剣を使った戦いの様子が描かれていて、生首もいくつか転がっていた。教師は、ジャスティンの「価値観」に重大な「懸念」があると言った。父親は驚いた。典型的な男の子の絵としか思えない息子の作品にではなく、教師のおおげさで女性中心的な反応にである。

 興味や情熱の対象となるものを常に否定されるのであれば、男の子はやる気を失い、学業がますます振るわなくなる。学校は、少年の動的な想像力を押さえつけるのではなく、生かすことを考える必要がある。


3. ゼロ・トレランス (不品行に厳しく対処する方針) をやめる。

 幼稚園をやめさせられる男子は、女子の5倍近くにのぼる。幼稚園から高校までを通して、停学になる生徒の7割近くが男子だ。最近では、些細な不服従や、ときにはまったく罪のない振舞いですら、停学処分の対象となる。学校のゼロ・トレランス方針に違反した少年がニュースにならない週はほぼない。

 メリーランド州の学校に通うジョシュ・ウェルチという 7 歳の少年は、ストロベリー味の平たいスナックを齧って銃の形にしたことで家に帰された。ジョシュは、ゼロ・トレランス方針に違反したことで罰せられた多くの少年と同じように、普通の 7 際の男の子だということで有罪になったのだ。


4. 休み時間を取り戻す。

 驚かれるかもしれないが、休み時間はまもなく過去のものになるかもしれない。ScienceDaily の調査によると、1970 年代以降、生徒たちの屋外での自由な遊び時間は 50% 近く減っている。そして、みんなに愛されていた遊びは校庭から消えてしまった。

 全国の学校で、ドッジボール、レッドローバー、鬼ごっこなどの遊びはほぼ姿を消した。自尊心を損なう、「暴力的」すぎる、などがよく使われる言い訳だ。人気の高いある指導ガイドでは、タッグ・オブ・ウォー (綱引き) をタッグ・オブ・ピースに言い換えることを提案している。

 少年はそのエネルギーを発散する必要がある。好きな遊びを自由に楽しむ必要がある。少年を 1 日中室内に閉じ込めておくことは、彼らの学習の役には立たない。

 学校では感情に重きが置かれ、競争はなくなり、座ったままでの勉強が多くなっている。男の子が求めるものからどんどん遠ざかっている。

 男子が過ごしにくいこのトレンドを反転させる必要がある。男性の学業不振は私達全員の関心事だ。彼らは私達の息子だ。私達の娘と共に未来を築く若い男性なのだ。少年のピンチは私達全員のピンチである。


 アメリカン・エンタープライズ・インスティチュートのクリスティナ・ホフ・ソマーズでした。(了)