デコトラの来歴・メモ

 水産商品輸送用のトラック輸送の需要は戦後拡大するが、海からの塩分を多く含む風や道路に撒いてある凍結防止剤の影響でよく錆びた。そのため、寒冷地の八戸や石巻などではステンレス板で補強していた。だが当時のトラックの運ちゃんは荒くれ者。補強ついでにデコる。


 こうしてできたのがデコトラ


 デコり出したら止まらない。競うようにデコりまくる。そんなデコトラ愛川欽也は高速道路で出会う。
 衝撃を受けた彼は東映に企画を持込み、『映画·トラック野郎』シリーズが生まれる。
 トラック野郎シリーズが大人気になったことにより、デコトラが更に普及。


 しかし、警察は快く思わなかった。


 映画では警察は悪者に描かれるわ、交通違反を助長するわで警察からお叱りを受けてブームは縮小。
 一時はデコトラの愛好家たちが集まりイベントなどが開催されるものの、さらにバブル崩壊や排ガス規制などで苦境に。
 さらにコンプライアンスが叫ばれる昨今においては数が減ってしまう。


 現代では、かつてのようなギンギラギンな出で立ちではなくなったが、アニメがデザインされていたり、故郷の風景が描かれていたりと、独自の進化を遂げている。


 オタク文化とヤンキー文化は意外とマッチしやすいのかも?

 「トラック野郎」シリーズは、「釣りバカ日誌」と並ぶ、この手の邦画の盆暮れ鉄板シリーズ物の、結果的に最後を飾るタイトルだったような気もする。そのような娯楽として映画を観る、そんな習慣を持っていた観客≒消費者の側のマインドと共に。


www.youtube.com

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 ステンレス板での装飾が当初、北日本の潮風や凍結防止剤から車体を守るためという「実利」がらみだった、というのは気づかなかった。私鉄でステンレスカーが流行ってのはそれより前、60年代のことだったと思うが、さすがいまどきの情報環境、日本語版wikiにもこれくらいの記述はちゃんとあるのが、何ともありがたくも感慨深い。

ja.wikipedia.org

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 これも毎度言い続けていることのひとつだけれども、こういう folk art 的なデザインや意匠についての考察というのも、本来は立派に 民俗学=folklore study の守備範囲のはずで、これはかつて北米の民俗学をノコノコ実地に眺めに出張った時にもあらためて思い知らされて、勇気づけられたのだが、巷の有志や趣味人、道楽筋の人がたがコツコツと、それこそマニアの丹精で記録したり、同人誌的な場で成果を報告してくれてたりと、こういう拡がりの中でこそ、本来のあるべき民俗学的な仕事の積み重ねは、人知れず続けられているのだろう、と信じている。