これが「AI」無しに普通にフィルムを高解像度スキャンし修復した映像です。この時点で既に十分に高画質でしょう。AIでアップコンバートなどせずとも、4Kスキャナーを使って再びフィルムから取り込み直せば4K解像度の映像を得られます。フィルムにはそれだけ情報量があります。https://t.co/aNeDJoXPp9
— ナッパ教司祭 (@nappasan) 2020年2月8日
まず「古い映像」だからといって、引用ツイート動画の左側のように必ずしも画質が劣悪だとは考えないようにしましょう。100年前に撮られた映像だろうと、元のフィルムさえきちんと残されているなら、現在の技術で高解像度スキャンすれば非常に高画質な画像を得ることができます。
巷で「HDリマスター」と謳われている映像は別にデジタル処理で画像をアップコンバートしているわけではなく、元のフィルムを高解像度でスキャンして傷などを修復したものです。今のフィルムスキャナーやデジタル映像処理技術が、ようやく昔のフィルムのスペックに追いついてきたというだけの話です。
写真は今だってデジタルカメラより大昔に使われていた乾板写真の方が解像度が上回るわけで、昔のものだからといって今の技術より全面的に劣っていると安易に思い込むのは良くありません。技術の進歩は決してリニアなものではないのですから。
・見えてもいない服の模様が再現されるような魔法の技術など存在しない
・デジタル処理を過信し何とかしようと安易に考える前に元のアナログメディアにあたるか、少なくともその存在に考えを巡らせる
・物理画像メディアの特性を知るべし
・古い=劣る と考えないというのが重要な点。
なお、このGigapixel AIのような技術は、既に大元の媒体が失われて低解像度なものしか現存しない映像については多分に利用価値があります。YouTubeで "gigapixel cutscene" などと検索すれば、昔のビデオゲームのカットシーンをアップコンバートした映像が沢山出てきます。
近年は手っ取り早いノスタルジー表現として古びたフィルム風やビデオテープ風の映像加工が蔓延しているせいなのか、そういった媒体が使われていた時代のものはまるで全てそのレベルの品質しか実現されていなかったかのように思い込んでいる人が増えているのが気に掛かります。
これは液晶移行後のブラウン管テレビに対するイメージとも共通する点です。ステレオタイプ的な「チラつきボケて白んだ画面」というブラウン管描写が巷に溢れた途端、実際にそんなものだったと思い込み始めるという。少し前まで実際に使っていたにも関わらず。
既存のアナログメディアを置き換える形で新しく普及するデジタル技術が常に前のものを全面的に上回るわけではないというのは、現在進行系の話なら電子書籍を例に取れば解りやすいでしょう。電子書籍は圧倒的に便利だし紙面が変色することもありませんが、紙の印刷なら圧縮ノイズは無いし高解像度です。
ここでいう「ビデオテープ風加工」というのは過度にコントラストを落としてノイズをビリビリに入れて走査線がガタガタになったような映像についての話なので、ビデオテープだって常にそんなものだったわけではないよという意味合いです。確かに少々説明不足でした。
— ナッパ教司祭 (@nappasan) 2020年2月9日