IT化四半世紀とエヴァ・メモ

 当時アプレットを筆頭にJavaが流行っていたので、組み込みEthernetノード(まだWi-Fiは無い)をJavaベースで実装すれば今で言うIOT機器みたいなのが出来るんじゃないかと発案して、「制御用汎用箱型装置・ジャヴァンゲリオン」と呼んだりしていたのも遠い思い出だ。


 TV版「新世紀エヴァンゲリオン」の放映は1995/10/4~1996/3/27、Windows95日本語版発売の馬鹿騒ぎが1995/11/23、JDK 1.0のリリースが1996/1/23、Wi-Fi Allianceの設立は1999年のことだ。我々ウチュー人もすっかり前世紀の昭和おじさんだな( ˘ω˘)


 TV版エヴァンゲリオンには公衆電話が出てくる、しかも「IDSN(ISDNの綴り換え)」というロゴ入りで。日本におけるINSサービスの提供開始は1988年でエヴァ放映時点よりだいぶ古いのだけど、インフラ先行で用途が存在しなかった。


 かつては専用回線を引きグローバルIPを申請割り当てしなければインターネットには接続できなかったのだが、1992年にIIJが日本初の接続事業(ISP)を開始。1994年12月にはベッコアメが開業、95年から雨後の筍みたいな勢いで「独立系ISP」が増えてゆく。


 やっと用途を得たINS、NTTはこれを追い風と捕らえて家庭向けINSサービスを「ロクヨンロクヨン・イチニッパ」の文句で宣伝、ルータ事業新規参入のヤマハRT100iがベストセラーとなってNTTのMN128やNECATermとシェアを争った。エヴァンゲリオンTV放映時はそういう時代だった。


 インターネットがそんなに凄いものなら、ネットに接続さえできればコンピュータの用途はおおかた実現できるんじゃないか。そういう発想でこれまた雨後の筍みたいなネット接続専用端末…今でいう「シンクライアント」が発表された。その最先鋒はSun/Oracle/Netscapeの「NC」構想だった。


 NC(Network Computer)はJavaプロセッサとRAMとブートROMしか入っていない箱で、インターネットに接続してJavaアプリをダウンロードして動く構想だった。アプリをJavaで書きさえすれば、NCの箱の中のCPUやOSがどれだけ変わっても同じように動くはずだった。


 今では埃が積もってカビが生えた「Write once, Run everywhere」Java構想、当時はMicrosoftの頻繁なアップデートと互換性損失に悩まされていたユーザーには救世主の預言として響き、気の早いライターは「もはやインテルマイクロソフトに支配される時代は終わった!」と高らかに宣言した。


 1995~96年はコンピュータ業界にとってかなりエポックメイキングな年で、これからどんな時代が来るんだろうと期待と不安にあふれていた。エヴァの掲げた「新世紀」という言葉はその気持ちを代弁してくれるかのようだった。


 しかしその後どうなったか。ISDNDSLFTTHとの競合に敗北、NC構想は空中分解してSunはOracleに買収されNetscapeはAOL買収後に消滅、Javaは「たくさんあるプログラミング言語」の1つになり、Windowsは「新たな支配の象徴」になった。


 その「新たなる支配」を揺るがしたのは、90年代には「もはや終わった企業」と思われていたAppleが2007年に発売したiPhoneだった。一度は挫折したINS構想による「電話網の全デジタル化」は携帯無線電話として、2019年の5G-NRで「新世紀にふさわしい情報革命」を喧伝することになる。


 90年代にあれだけ無敵に思えたインテルマイクロソフトは、この潮流に乗り遅れた。インテルはARM軍勢の躍進を横目にx86アーキテクチャを徹底的に小型消費電力化したATOMを発表、マイクロソフトiOS/Androidに対抗すべく携帯電話向けに仕立て直したWindows Phoneをリリースするが…


 インテルWindowsに頼るかLinux(Moblin/MeeGo)に賭けるかで右往左往し、マイクロソフトはCE系とNT系の間で右往左往し、Windows 8では携帯向けUIをデスクトップPCに取り込もうとして総スカンを食ったり、腰の据わらないギクシャクしたビジネス展開が目立った。


 TV版エヴァが放映された1995~96年にはまだWi-Fiは影も形もなく(無印802.11の仕様リリースが97年6月)、一般家庭へのインターネット接続がISDNで流行しはじめ、携帯電話はスマホどころかようやくデジタル2GのcdmaOne(IS-95)仕様が発表された頃だった。


 四半世紀も昔なんだから当たり前といえば当たり前なんだけど、はるけくも来つるものかな感がある。エヴァはあれだけ派手に爆死したネタをここまで引っ張ってきたものだ。そんなことを言ったらガンダム(1979)やヤマト(1974)はまだ引きずっているけど(笑)