老人と恥・メモ

 辛うじてセルフレジについて行けてる前期高齢者:親父殿(74)は「決して肯定はしないけど、店員にキレる老人の気持ちは理解出来るんだよ」と語る。


 「尋ねる事って恥ずかしいんだよ。自分の無知さや無能さなんか一番直視したくない。ボケが始まってたり肉体の衰えを痛感してる人はなおさらそうだろう」「押して注文するやつ(タッチパネル)とか自分でやるレジ(セルフレジ)とか、老人にとっては訊かないと分からないんだよ。でも周りの若いやつは説明聞かないでもピッピピッピやれるだろ?その中で一人だけ店員に質問するのは、やっぱり恥なんだよ。老人はいつも恥と戦ってる。いつも戦ってる」


「高い飯を食いに行って、他の客がみんな当たり前にマナーをこなしてる中で逐一店員に『コレどうやって食べるんですか?』『コレ何に使うんですか?』って聞くの、若者でも辛いだろ?老人そんな感じ。逐一店員に聞かないと生きて行けない。しかも昨日まで通用してたルールが急に変わる」


「昨日まで注文聞きに来てくれたウェイトレスのオバちゃんが急に『こちら(タッチパネル)からご注文下さいね〜』って板だけ渡して行っちゃうと、年寄りは困るしか無い。困った末に恥をしのんでもう一回オバちゃん呼んで教えて貰う。そういうのがいっぱいある。コロナ禍で一気に多くなった」


「だから『もうこれ以上恥をかかせないでもいいじゃないか。黙って昨日までの通りにやってくれてもいいじゃないか』と泣いちゃうのは、理屈は解るんだよな。年寄りは泣くんじゃなくて怒鳴るになるから害悪だし、全く肯定はしないんだけどな。俺もああなってたかもなって、ちょっと思う」だそうだ。


 親父殿。初めて入ったチェーン店の牛丼屋で「お好きな席にお座りください」って言ってもらえなくてモジモジ待った後にソッ…と出ていってそれ以降苦手意識がついちゃうようなタイプの人間なので、老人の代表意見という訳では無いのだろうけど。老人は老人で言い分があるんだなぁとは思った。


 昨日まで普通に歩けてた町中が急に段差だらけになる、みたいな。躓きが頻出する生活になっちゃったらもう人生がストレスなのよな。段差のたびに「ここはこうやるんだよ」と教えてくれる人も、「段差に困ってしまった」と愚痴れる家族もいないのなら、まぁ泣き喚き散らしたくはなるよね。


 だからといって店員に怒鳴り散らして良いわけではない。そこは大前提として否定していきたい。