力仕事と武術鍛錬の関係・メモ

 高校の時、夏期講習代稼ぐのにライン屋でバイトしてた。
 ライン屋っていうのはあんまり見る機会ないと思うけど、道路の白線工事のお仕事。
 その当時は若いし柔道や格闘技なんかもやってたから同級生より気力も体力もあったんだけど、同じ班にいた小柄な爺さんの体力にはとても勝てなかった。


 ライン屋の仕事は早朝に釜車と呼ばれるトラックの荷台に、その日使う白線の材料の袋を積み込む所から始まる。
 ひと袋およそ20Kgある材料を置き場から二つ三つ担いでは、何往復もしながら荷台に積んでいく。
 力に任せてやるとすぐにヘトヘトになってしまう作業に僕は腰を痛めた。


 あと、ガラスビーズやプライマーの入った一斗缶を積み込むのも大変。
 でも他の先輩やその小柄な爺さんもそういう作業をヒョイヒョイとやる。
 今でも感動を忘れないのが、その爺さんの職人技、角スコで掬った滑り止めの砂利を接着剤を、塗った路面に正確に捲く技。


 角スコの四角形を利用して、砂利を空中に放って均一に四角形拡大して接着剤の上に座布団を敷き詰めるような正確さで撒いていく。
 もちろん結構な量があるから体力も使う。
 あと、穴掘りシャベルで標識用の穴を地面に掘るのも私より全然早かった。


 そういう経験から、現場の力仕事の職人の力や身体の使い方は、スポーツ的な体力などとは種類を事にするとその時に感じた。
 なるべく楽に、効率よく、心身への負担も少なく、でも仕事として続けられる様な動き方というものは、かなり武術的もである。


 だから、武術における鍛錬というのも、努力云々というより、仕事を楽にこなす様な発想が好ましいと思っている。
 従って、薪割りとか餅つきとか、そういう古風な仕事は上質な稽古であるから、なるべく経験出来るように積極的に参加するようにしている。