バイト先で見たもの・メモ

 真っ黄色になった畳の部屋に十数人が押し込められて寝泊まりする場所だった。毎日、酒を飲んで宴会を開く。朝から晩まで働かされる。12時間くらい、肉体労働をしていたと思う。みんな、陽気で良い人ばかりだった。世間的には確実にクズだったが、クズの世界はクズなりに仁義があり、居心地が良かった。


 年金なんか、とてもじゃないが払えないので、ほぼ全員が未納である。将来の夢なんぞ、何もない。今の生活を何とかするだけだ。ただ、ただ、日々の生活をしのぐだけである。こういうのを世間では自己責任というらしいが、こういう世界にいた者から言わせてもらうと、半分は正しいが半分は間違いだ。


 老後は、ほぼ全員、生活保護だと思われるが、要するに、会社が正社員として雇って、しっかり給料をくれたら、そもそも給料天引きで社会保険を支払える。払えないから未納になるわけであり、未納を責めること自体がナンセンスだ。能力がないわけではない。普通のおじさんだ。社会から弾き出されただけ。


 健康保険も払っていないので、病気になっても医者に行けない。そういえば、睾丸が肥大化し、野球ボール2つ分くらいになっているおじさんがいた。触ってみると、とても固い。「医者に行ったら」と周囲が勧めるが、国保を払っていないので無理だ、とのこと。結局、そのままだった。長生きは無理そうだ。