魔法が解けたとき、の黒歴史

 まったく全然関係ない話なんだけど、

  ・難関学校に合格、入学した成功体験を持つ


  ・名門学校で一分野を修めた成功体験を持つ


  ・一分野での研究などで相応の実績を成功体験として持つ

とかの人って、【自分の威光が自分の守備範囲外にも届く】っていう錯覚に陥りやすいよね。


 まったく全然関係ない話なんだけど、

  ・同人誌以外の本を出版した経験が1冊でもある

と、「自分は作家」「自分は人とは違う」「自分は教える立場」「自分は敬われて当然」「自分の価値を分からない物は見下していい」みたいな廚二病スイッチが簡単にオンになるんで、もうホント気を付けて欲しい。


 これは、これから本を出す予定の新人作家諸氏にはもうほんと口酸っぱく言いたい。50冊本を書いて200冊本を出しても、人と違う自分にはさほどなれないし、教える立場として偉そうになんかできないし、敬われて当然なんて気持ちにはならないし、他人を見下したらエラいことになることだけは痛感してる。


 でも、同人誌ではない本を、出版社の編集者に認められて出版社から出した――っていうだけで、簡単に承認欲求は充足200%いっちゃって、「人とは違う優れた俺」という錯覚に絡め取られやすくなるの、歳いって掛かる廚二病の類なので。そして、歳いってから掛かると治りにくいので。アレ。


 そこで拗らせて人間関係を損なう人とか、しかも売れなくて続巻出ないのに「俺は凄いんだ!」とやっちゃったせいで抉れた人間関係が元に戻らなくて色々寂しくなる人とか、もうほんとヤバイので。「本を出した俺凄い」はもうホント、やばい病気の入り口になりかねないので、重ね重ねご注意いただきたい


 これ、誰かに言われてるうちが華で、

・何も言わずニコニコされるだけ


・いつの間にか付き合いが悪くなっている

とか、もうほんと起きるから。呪いみたいなもんだから。


 自分で作った同人誌を自分で刷って自分で手売りしてる、とかだと、そこまでは気が大きくならないんだけど、「自分以外の編集者がいて」「名の知れた出版社が自分をセンセイと持ち上げて本を出してくれて」「自分以外の読者が感想を書いてくれて」みたいなのが重なるだけで、もうほんと舞いあがっちゃう


 そこで自分を神格化したり、過剰に価値の高い存在と自己演出したりとかすると、【魔法が解けたとき】に黒歴史という恥ずかしい思い出とかじゃ済まなくなるので。やべえので。


 専業作家ではない人が最初の一冊、二冊を出したときに割と罹患しやすい事例なので、もうほんと機会がある事に訴えたい。肩口掴んで襟首掴んで振り回しながら言い聞かせたい。煙たがられるかもしれないけど、それで先々続けられたかもしれない才能が、意味なく傲慢になって爆散するの見たくない。


 これは、商業出版の世界で30ン年お仕事して、のべ200冊以上を手掛け、新人作家の単著刊行物やアンソロの監修も手掛け、自身も50冊以上出してきた経験に鑑みて、もうほんと何より先に何より強く訴えないとアカンことだと思っている。
新人作家の価値を死なすのは、高確率でその当人なので。


 「本を出した俺」という承認欲求200%充填された状態かもしれない人に言うの、もうほんと心苦しいんだけど、デビューを果たした新人作家諸氏はほんとこれ心に刻んでほしいです。