「歴史家」とクレーマー

 どこかの郷土博物館だか民俗資料館だかの歴史学者の館長と、地元のいわゆる郷土史家みたいな御仁がバトってるらしい、という話。

 後者が地元の展示について間違っていると何度も申し入れしていて、それに対してそれなりに丁寧に応対していたものの、さすがにラチがあかなくなって、これ以上はもう対話しない&最終回答だ、と文書で返答したのが、地元紙に報じられて一気に表沙汰の騒動に、といった経緯のようだけれども、大方のTwitter世間の論調としては、シロウトのクレーマー案件といった方向でとらえていて、まあ、それはまず素朴な感想としてわかるんだけれども、ただそこから、「論文にしてやりあえ」「プロの作法をわきまえろ」といった噴け上がり方をする向きが結構出てきているのが、まあ、その、なんというかやりきれんなぁ、と。

 「民間研究者」「在野研究者」というのが何やら過剰にもてはやされた風潮が少し前あって、いまも基本的にあるのだと思うが、そうやってもてはやした同じ界隈が、どうも今回のこの案件では「プロの研究者の作法として「論文」にして相互批判するのがスジ」的なことを平然と言い募っているのが、果してどれくらい自覚あってのことなのか、例によってどんよりしてしまうのだ。

 「論文」という形式をどうしてそこまで自明の「正義」にしてしまうのか、ということが、その「在野」「民間」「アマチュア」であることにいささか歪んだこだわり方をしてしまうということと、おそらく同じことの裏表なんだと自分などは感じるのだけれども、なんだろう、これってどっちにしても不幸で不自由なことなんじゃないだろうか。

 クレーマーとそれに対するある程度公的な組織なり機関の対応としてなら、これはこれでまあ、あり得ることだろうな、と思う。